絵本ライブラリー 読む、残す、思い出す

2020.4.1スタート。元小学校教諭,小3&3歳兄弟育児中の筆者が,読み聞かせをした絵本を中心に書籍の記録・紹介を行っています。自分と、子どもたちと、本との軌跡を記しておきたい。筆者の肌感覚によるカテゴライズもしております。昔の記事も振り返って楽しんでもらえるブログを目指したい。

ふくろうくん

『ふくろうくん』 アーノルド ローベル 作 三木 卓 訳

 

がまくんとかえるくんを楽しんでくれた息子。

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別のアーノルド・ローベル三木卓作品も読んでみよう~!ということで、前に拝見したインタビューでもオススメされていた『ふくろうくん』を読んでみました。

 

絵本ナビのインタビューはこちら☟

www.ehonnavi.net

 

『ふくろうくん』に収録されているお話は全部で5編。

そのどれも、登場人物は、まさかの、ふくろうくん、オンリー!

それなのに…すんごく笑える。笑

 

もうね、読めば読むほど、ふくろうくんという人は、情けなくて、かわいそうで、破滅的で、愛しい。読み聞かせをするのならば、いかにその面白さと愛おしさを表現できるか、その手腕が問われる、とさえ思う。

 

私は『なみだのおちゃ』が好きだなぁ~。そこまで悲しみに没頭できる、それを愉しんでさえいる、ヤバさ。笑

なんでしょう、ふくろうくんって、本当、完全に、ヤバい奴なの。

でもさ、私、多分、そういうヤバいところ、持ち合わせていると思うんだよね…いや、人間みんな、そうだと思うよ?まぁ、夫に読ませたら、お前みたいだ、って言われそうだけどね…へへへ

でもさ、いいじゃない。一人なんだから。いいじゃない。誰にも迷惑かけてないんだから。

 

ふくろうくんの破天荒さと裏腹な丁寧でスローな暮らしもまた、ほっこりとさせてくれる。

 

 

三木卓さんが絵本ナビのインタビューで、

 

「ふくろうくんを見ていると、なんだか、この人は奥さんに逃げられたんじゃないかななんて思ったりね(笑)。よっぽど立派な奥さんじゃないとついていけないよね。こんな階段上ったり降りたりしてたら。」

 

と話していらしたのだけれど、なんかね、もうね、本当、分かる。笑

奥さんに逃げられたオジサン…うーん、なんだか、ぴったりしっくりきてしまう。

だって、すーごく愛しいんだもん。だから、結婚したくなっちゃう。でも、一緒に暮らしてたら絶対大変だな、って。笑

 

最後の1話は、なんだかしっとりと、ほっこりと、そのまま眠りに就きたいような感じ。やっぱり、寝る前に1話ずつ読むのにちょうどいいお話のボリュームだなぁと思います。息子はどんどんせがんでくるから結局最初は5話ぶっ通しで読んだけどね。笑

 

 

あのねぇ、これねぇ、一人芝居にしたら面白いと思うんだよねぇ。

悲しい、愛おしい、おじさん。

誰か、男性の役者さん、『ふくろうくん』を題材に一人芝居をやってみてはいかがでしょう。

観たいなぁ。そして、ニヤニヤしたい!!!

 

『ふくろうくん』 1976年

発行所 文化出版局

アーノルド・ローベル作 三木 卓訳

 

 

ぼくはあるいた まっすぐまっすぐ

『ぼくはあるいた まっすぐまっすぐ』 

マーガレット・ワイズ・ブラウン/ 坪井郁美 ぶん 林明子

まだ丸みの残るあどけない4頭身。それでいて精悍な眼差しでまっすぐこちらを見つめる男の子。

まくり上げたズボンの下は裸足。両手に靴を片っぽずつ、右手には野で摘んだ花も携えている。

 

なんて掴まれる表紙絵だろう。小さな体から放たれている、覚悟のようなもの。ちびっこボーイよ、かっこいいぞ。つい、手が伸びる。

  

この絵本は、マーガレット・ワイズ・ブラウン作 ”Willie’s Adventures” に収められた3編の短いお話の中の ”Willie’s Walk” をもとに創られたのだそうです。原作では、ウィリーくん、なのね。ちなみに本作での男の子の呼称は「ぼく」であり、お名前は出てこない。

そしてっ!マーガレット・ワイズ・ブラウンじゃんっ!最近読んだじゃんっ!

bg8qp.hatenablog.jp何も考えずに手に取った本たち。自分では意識していなくても、自然と繋がっていること、って、ある。不思議だけど、そういう巡り合わせがまた、面白いよね。何事も、何かやっていれば、何か、携わっていれば、不思議と繋がってくる。だから、前に進むしかない、何か動き続けるしかない、んだけど…なんだろう、最近、クスブッテルヨ。ワタシ。ワタシノオンガク、ドコヘイッタ?ススメ、ススメ…

 

 

さて、お話の始まりは、おばあちゃんからの電話。

電話を取ったぼくは、一人でおばあちゃんのお家へ行くことになる。

「おうちの まえの みちを まっすぐ いって

 いなかみちを まっすぐ まっすぐ」…(本文より)

そうすれば、おばあちゃんの家に着くという。

ぼくは、初めて見る世界に翻弄されながら、本当に≪まっすぐ≫おばあちゃんのお家へ向かうのだけれど…

 

 

これはもう、超・大冒険。

“ぼく”は、何歳なんだろう。4歳?5歳?その年で一人で歩いておばあちゃんの家に行くなんて!

今、我が息子(もうすぐ6歳)を最寄り駅の向こう側に住んでいる徒歩20分の義実家に一人で向かわせることさえ、私は怖くてできないわ…!

なんて大胆なのよ、ぼくのおばあちゃん!それより、親はどこへ行った!親に何も言わずに家を出るのかっ!!

…なんて、いけずなツッコミは、してはいけない。

 

とにかく、ぼくが、野を越え山を越え川を越え…まっすぐまっすぐ、歩いていく姿が、ひたすら愛おしい。

 

やっぱり、林明子さんの絵は、本当にすごい。体全体に表情があって、あどけなさや好奇心、喜び、驚き、怖さ…男の子の気持ちが、絵からダイレクトに伝わって来る。

 

林明子さんのことを書く度に、すごい、ばっかり言ってる私。笑 

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あの勇敢な表紙の眼差しにすっかり掴まれてしまった私だけれど、裏表紙の口の周りをベトベトのチョコレートまみれにしているのは、紛れもなく、ちいさな男の子。

 

ただ、ひたすら“ぼく”の世界にスポットライトを当てた、林明子さんの手腕が光る1冊だなぁと思う。息子もドキドキしながら、絵に惹きこまれているようでした。

 

平仮名で書かれた易しいお話だけれど、≪まっすぐ≫の意味の面白さに気付くのは、小学生くらいからかなぁ。

 

 

 

ああ。私も、まっすぐ まっすぐ、表紙の“ぼく”のような眼差しで、何かを捉えていたい。

 

なんだべな。春の霞のような心模様の今日この頃です。きっと、耐え期。

…すみません、私情ですけれど。

 

『ぼくはあるいた まっすぐまっすぐ』 1984年

発行所 ペンギン社

作 マーガレット・ワイズ・ブラウン/ 文 坪井郁美/ 絵 林 明子

 

 

万次郎さんとたぬきのこ【こどものとも2021年5月号】

『万次郎さんとたぬきのこ』 ぶん・本田いづみ え・北村 人

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こどものとも」5月号が届きました!

 

今月は横長だった!こっち向きもイイネ!

 

 

主人公の万次郎さんは、毎日早起きをして、種まきに水やり、草つみにたけのこほり…朝から晩まで働いている。

ある日、万次郎さんは草団子を作り、仕事の後に食べることにして出かけると、3匹の子だぬきたちに出会う。お昼寝から目覚め、お腹が空いたと泣き出してしまう子だぬきたち…万次郎さんは自分のお昼ご飯のおにぎりを差し出し、それでも足りないと騒ぐ子だぬきに、ふかし芋、大根汁をこさえてやり、とうとう草団子まで食べられてしまうのですが…

 

 

あぁ…万次郎さんって、素敵。好き。いい男。

穏やかで、優しくて、チャーミング。私だったら子だぬきに手を焼いて間違いなくイライラしてしまいそうなんだけども、万次郎さんは、違う。本当に人間が良くできている。表情がまた、すーごくいいのよねぇ。そして、たぬきたちも結局、とってもとっても可愛いのだ。きゅん。

おいしい食べ物。丁寧な暮らし。

なんともほっこり、優しい気持ちになれるお話でした。

 

 

絵を描かれたのは北村人(じん)さん。北村さんのプロフィールによると、星野源の『そして生活はつづく』の装画も手掛けているという。おお、その本、家にあるなぁ。

 

北村さんが、こどものともの付録の”絵本のたのしみ”に、文章を寄せている。

 

私、存じ上げなかったのだけれど、万次郎さんのお話はシリーズになっていて、本作が3作目なのだそう。そして、その製作途中に作者の本田いづみさんはご逝去されてしまったのだそうです…編集部だよりによれば、『万次郎さんとたぬきのこ』は、本田さんのご家族の協力を得て完成された文章なのですって。

その訃報を受けてから原稿を読んだ北村さんは、突然のことに驚きと悲しみに暮れながら、遺された原稿を絵本の形にしようと動き出したのだそうです。   

 

本田いづみさん、まだまだお若かったのに…でも、きっと本田さんも天国で完成した絵本を読んで、幸せな気持ちになったんじゃないかなぁ、と思う…作り手の想いがたっぷり詰まった、言葉も、絵も、柔らかくて、愛にあふれた絵本でした。本田いづみさんのご冥福をお祈りいたします。

 

 

前の2作も読んでみたいなぁ!!

 

月刊予約絵本「こどものとも

『万次郎さんとたぬきのこ』 2021年5月号(通巻782号)

発行所 福音館書店

ぶん・本田いづみ え・北村 人

 

みんなあかちゃんだった

『みんなあかちゃんだった』 鈴木まもる・作

 

赤ちゃんの誕生を楽しみにしている息子。

 

「ぼくがだっこしてあげるんだ!」

「ぼくのおもちゃ貸してあげるよ!」

「これが赤ちゃんのベッドだよ!」(←段ボール。)

 

どうやら、楽しい妄想がどんどん膨らんでいるらしい。

 

可愛いなぁ、愛おしいなぁ、と、思う。と同時に、彼にとって、赤ちゃんって、本当に未知の存在なんだろうなぁ、と思う。

私があなたを産んだときだって、全てが未知の世界だったのだから、たった5歳のあなたにとって、赤ちゃんっていうのは、本当にわけのわからない、新生物なんだろう。

 

赤ちゃんがどんなものか、伝えられるような絵本は無いかなぁ…と思っていたら、見つけたー!そうだそうだ、これがいい。2年生の担任をした時に、生活科の生い立ちを振り返る学習で紹介した本。

 

 

 

「わすれちゃったかも しれないけれど,

 あなたも

 あかちゃんだったときが あったのです。」(そでより)

 

この本には、生まれた直後から3歳くらいまでの赤ちゃんの生態が描かれている。

そう、”生態”。笑

最初のウンチは黒い、とか、おっぱいを飲みながらねちゃうこともある、とか、赤ちゃんのありのままの姿や、いろんなことができるようになっていく様子、だんだんやんちゃになっていく様子などなどが、ページいっぱいにユニークに描かれている。

読んでいたらなんだか懐かしくて、携帯に入っている昔の写真を見せながら、君もこうだったよ、ほら、この絵と同じポーズじゃない、なんて言いながら、ずいぶん時間をかけて読んでしまった。今までだって、息子が赤ちゃんだった頃の写真を一緒に見ることはあったけれど、絵本と一緒に見ることで、説得力が増した、というのか、母が勝手に感情移入しちゃったのか、なんだかすごく尊い時間のように思えた。なんて幸せなんだろう。なんてありがたいことなんだろう。元気に生まれてくれて、大きくなってくれて、本当にありがとうね。

ちなみに息子は、ツッコミを入れているネコのキャラクターが気に入って、ゲラゲラ笑っておりました。そして、赤ちゃんっていうのは面白い生き物なんだな、ということが分かったらしい。笑

私も、1人目のときは悩んでばかりだったけれど、親が必死にもがいている間に子はどうにか育つ、ということが分かったから笑、これから家族で一緒に格闘する日々がとっても楽しみになりました。

 

 

これからお兄ちゃんお姉ちゃんになる子にはもちろん、小学生に、中学生に、ぜひ読んで欲しいなぁ。集団で全部を読み聞かせるのは難しいけれど、かいつまんで紹介しながら読むのもすごく面白いと思う。

 

 

わたしも、あなたも、お隣のおじちゃんも、テレビに出ているあの人も、本当に、最初は、みんなあかちゃんだったんだよね。

 

愛がいっぱいの1冊。

 

『みんなあかちゃんだった』 2000年

発行所/小峰書店

作/鈴木まもる

 

 

きんのたまごのほん

きんのたまごのほん』 

さく マーガレット・ワイズ・ブラウン やく わたなべ しげお 

え レナード・ワイスガード

 

先週の日曜日は、イースターでしたね。

イースターは、イエス・キリストの復活を祝うお祭りで、春分の日以降、最初の満月から数えて最初の日曜日、に行うらしい。それが、今年2021年は4月4日だったのだそう。

日本ではあまり馴染みのない文化ではあるけれど、息子の大好きなおさるのジョージでたまご探しをするお話が放送されていたり、私の大好きなEテレのグレーテルのかまどイースターのお菓子が取り上げられていたり、お店屋さんにもイースターの飾りやお菓子が売っていたりと、イベントとしては何となく、年々盛り上がっている感がある気がする。東京ディズニーリゾートもいつからかイースターのイベントをやるようになったよね。

 

クリスマスを祝って、大晦日に寺の鐘の音を聴き、正月に神社にお参りに行く、折衷大好き・寛容な国・日本、ではあるけれど、イースターがこうして着々と日本の四季に定着していっている理由…

 

それは、なんてったって、かわいいから!だと思う。(個人の感想です。)

 

たまご!

うさぎ!

カラフル!

 

かわいいモチーフに、春らしい色遣い。

寒い冬をやっと乗り越え、春に向かってあらゆるエネルギーが盛大に高まっていくなか、ポップでキュートなイースターグッズたちが、私たちの魂に何も訴えかけてこないなどということがあろうか。(いや、ない。反語。)

 

 

はい、前置きが長いですが!!

とにかく、

きんのたまごのほん』が、かわいいんです!!!!!!

 

 

 

絵本を開くと登場するのは、小さいうさぎの男の子。

ある日、中から何やら音のするたまごを見つけたうさぎは、何が入っているのだろうと想いを巡らせながら、どうにかしてたまごを割ろうとするのだけれど、なかなか割れずに眠り込んでしまう…するとピシピシッとたまごが割れて…

ほんわかニヤニヤ、仲良しのお話。

 

 

 

作者は、マーガレット・ワイズ・ブラウンさん。アメリカの児童文学作家。『詩の絵本』、有名よね。今度ちゃんと読んでみよう。

訳は『エルマーのぼうけん』をはじめ、いろんな児童文学の翻訳や、日本語のお話も自ら書かれた渡辺茂男さん。

 

そして、絵が、『詩の絵本』でもタッグを組んでいる、レナード・ワイスガードさん。

 

この本は、何といっても、絵が!絵が!!!とにかく素敵!!!(個人の感想です。2回目。)

 

…いえ、いや、これは、間違いなく普遍的感覚。

 

だって表紙からして、なんて緻密で素敵な絵なのでしょう。ゴージャスなリボンが巻かれたたまごに描かれた植物ののびのびと、それでいて重厚感のある配置と色遣い。それを無邪気に抱えるふっくらとした愛おしいうさぎよ。

 

ページをめくっても、めくってもめくっても、その美しく愛らしい世界が、ずーっと続くのだから麗しい。

 

むしろ、本文の絵の明るい色遣いとのびやかさこそ、味わっていただきたい。なんならページを開いて飾っておきたい。飾るにしたって、どのページにしようか迷ってしまう全ページのクオリティ。ワンピースにして着たい。

 

まじ、かわいいっす。素敵っす。心躍るっす。

 

 

うさぎとたまごのモチーフ、そして春らしい華やかな絵の世界が、イースターの季節にとってもぴったりの1冊でありました。上質!

 

きんのたまごのほん』 2004年

発行所 童話館出版

文/マーガレット・ワイズ・ブラウン

絵/レナード・ワイスガード

訳/わたなべ しげお

 

 

バルバルさんとおさるさん【こどものとも2021年4月号】

『バルバルさんとおさるさん』 乾 栄里子 文 西村 敏雄 絵

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こどものとも」4月号です!

 

バルバルさんシリーズ!

 

まちのはずれにある、青いやねの小さな床屋さん「とこやバルバル」。

バルバルさんのお店には、人間のお客さんだけでなく、ときどき動物のお客さんもやってくる。

ある朝、バルバルさんが開店準備をしていると、おさるさんがやって来る。

お客さんだと思っていたら、いつの間にかエプロンをして、バルバルさんの仕事を手伝い始めるおさるさん。あまりに熱心なので、明日からも来てもらうことに。

さて、おさるさんがバルバルさんの床屋へやってきた理由とは…?

 

 

『バルバルさん』(福音館書店 2008年)は、前に読んだことがあったので、おぉ!あのシリーズだ!とピンときた。『バルバルさんとおさるさん』はシリーズ第3弾だという。

楽しいシリーズの新作が、できたてほやほやで読める。やっぱり「こどものとも」、いいなぁ…!とニヤニヤする私。ありがとう!ありがとう!!

 

 

それにしたって、おさるさんが本当に働き者なのだ。ちょっと不器用なのに、一生懸命頑張る姿は、オバチャンなぜか涙が出そうになるヨ。そして、急に押しかけてきて働きまくるおさるさんを温かく受け入れるバルバルさんの包容力よ…!

 

おさるさんのカットが大人気になり、猫や羊や犬までおんなじ髪型になっているところで、息子ゲラゲラ。

人間と動物が当たり前に一緒に生きる世界。優しい。温かい。愛。

柔らかでユニークな絵に映える、ブルーの背景がとってもおしゃれ。バルバルさんの床屋さんで、穏やかにおしゃべりを楽しみながら、髪を切ってもらいたくなる。

 

 

さて、いきなりバルバルさんのお店におさるさんがやってきた理由…そのカギは、前作『バルバルさん きょうはこどもデー』に隠されているのだそうです。そちらも読んでみたいな!!

 

月刊予約絵本「こどものとも

『バルバルさんとおさるさん』 2021年4月号(通巻781号)

発行所 福音館書店

乾 栄里子 文 西村 敏雄 絵

 

よるのさかなやさん

『よるのさかなやさん』 穂高順也・文 山口マオ・絵

 

ページを開けば、タイ・タコ・カニイカ・サンマ・ホタテ・ウニ…

 

「ここの さかなは、

 いつも ピチピチ しんせんで

 まるで いきているみたい」(本文より)

 

と、大評判の魚屋さん。

ところが、夜になって店じまいをすると…なんと、魚たちは”死んだふり”をやめて、ひょっこりひょこひょこ店を飛び出し、のびのび自由に遊び始めるのです…!

 

 

お魚好きの息子。行きつけのスーパーの魚コーナーではいつも魚を覗いていく。

そういえば、少し前までは大きな声で「すごぉ~い!」とか「おっきいねぇ!!!」とか、ちょっと恥ずかしくなるようなオーバーリアクションで感動を表現していたが、最近は静かにぐるっと一周して、じーっと見つめると、さらっとその場を離れていくようになった気がする。いや、もちろん、必ず覗きに行く様子からして、お魚には興味があるし、都度、彼なりに感動しているのだとは思う。ただ、THE☆小さい子、みたいにキャッキャしなくなってきたなぁ。成長する、というのは、そういうことなのかなぁ。もう年長だもんなぁ…うむむ…愛しさと切なさと心強さと。いや、ま~だまだ無邪気なんですけどもね。

 

 

さて、みんなが寝静まった後、実は、〇〇は〇〇してます!!的な世界観!

おもちゃのチャチャチャ!的な!

わくわくするよねぇ~!

子どもの頃、お雛様はいつも人間に聞こえないくらいの小さな声でおしゃべりをしている、というお話を読んで、七段飾りの前に正座してお雛様を眺めながら耳を澄ませたことを思い出した。

お魚たちが、野球したり、かくれんぼしたり、夜空を泳いだり…

そんな世界があったら、どんなに楽しいだろう。

そして、そんなこと、お店のおじさんは知らないんだろうな、という、ヒミツのナイショ感もドキドキワクワクする。

寝る前に読めば、今頃、お魚たちは動き出す準備をしているのかなぁ、と思いを巡らせ、夜の世界でのびのび遊ぶお魚の夢が見られそう。

集団でサクっと読み聞かせる1冊にも良さそうです。

 

絵は、わにわにシリーズの山口マオさん。

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ゴツゴツと力強い版画の世界が、「魚屋」という舞台にえらく映える。そしてやっぱりコミカルで、な~んか、オシャレ。色遣いが、いいよなぁ。

 

 

息子は、最後の朝のシーンで、お店に戻り損ねたタコを見つけて、ゲラゲラ笑っていました。

探してみてねっ!

 

『よるのさかなやさん』 2016年

発行所 文溪堂

文/穂高順也 絵/山口マオ

 

 

ふたりはともだち

『ふたりはともだち』 アーノルド・ローベル 作  三木 卓 訳

教員時代に使用していた東京書籍の2年生の国語の教科書に、『お手紙』という教材文があった。子ども時代に勉強したなぁ、とか、お子さんの教科書に載ってるなぁ、とか、ご存知の方もたくさんいらっしゃるかもしれない。

 

登場するのは、緑色のかえるくんと、茶色いがまがえるのがまくん。ある日かえるくんががまくんの家にやって来ると、がまくんは悲しそうに玄関の前に座り、郵便受けに手紙が来るのを待っていた。なぜ手紙を待つことがそんなに悲しいのかというと…実はがまくん、一度も、誰からも、お手紙をもらったことが無かったのだ。それを聞いたかえるくんは、がまくんにお手紙を出すことにするのだけれど…

 

がまくんとかえるくんが、可愛くて、愛おしくて、ほっこり笑えて…役割読みをして感情移入なんかしたら、なんだか泣いちゃいそうなくらい。回を重ねるほど、好きになるお話。研究授業も何度かしたっけなぁ。

 

そんな『おてがみ』※が収録されているのが、この『ふたりはともだち』という本。

 

※新出漢字の学習のために、教科書の題名はお手紙、と漢字にしてあるのだと思うのだけれど、『ふたりはともだち』に収録されているオリジナルタイトルは平仮名で『おてがみ』。その他にも、教科書に載る都合でオリジナル版からのちょっとした変更があるかと思うので、お子さんの教科書に載っていたらラッキー!一緒に探してみるのも楽しいかも。当時のクラスでも、がまくんかえるくんシリーズやアーノルド・ローベル三木卓さんの他の絵本を借りてみんなで読み合っては、子ども達がどんどん感想を教えてくれて、贅沢な時間だったなぁと思う。

 

がまくんとかえるくんのシリーズは他にもあるのだけれど、この『ふたりはともだち』は、三木卓さんが絵本を翻訳した初めての作品なのだそう。

絵本ナビのホームページに素敵なインタビューがあったので、ぜひご一緒にご覧ください。

www.ehonnavi.net

 

インタビュー内には、『すてきな三にんぐみ』の訳者、今江祥智さんの名前も挙がっている。

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アンゲラーと今江さんのように、アーノルド・ローベル三木卓さんも、同じ時期に生まれ、三木さんはたくさんのアーノルド・ローベル作品を翻訳してきた。三木卓さんは飄々とおおらかに語っていらっしゃるけれど、やはり、ローベルには親近感がある、のだそう。

きっと、そうだ、そうじゃなきゃ、こんなにのびのびとした翻訳はできないんじゃないかな。

子どもの頃、外国のお話があんまり好きじゃなかった私。やっぱり翻訳した文章って、なんか硬かったり、ぎこちない感じがしたりして、それも特別な感じで良いのかもしれないけれど…私には、日本語の流れや、会話のリアリティみたいなのが大切だったんじゃないかなと今になって思う。そういう意味で、がまくんとかえるくんのお話は、すごく、スムーズ。殊に、台詞が秀逸。(エラそうでスミマセン)でも、本当に、そう思う。

三木卓さんが、その世界を味わって、楽しんで、臨場感をそのまま一緒に吐き出してくださったような感じ。

 久々に読み返してみたけれど、やっぱり、いいなぁ。

 

 

 

さて、絵本を開くなり「おぉ、これ、ぼくが読めそうな感じだなぁ!」と、息子。

そうなのです。ほとんど平仮名。漢字もルビが振ってあるから、一人で読むにも易しい。

すぐにがまくんとかえるくんのファンになってくれました。

 

『おてがみ』を含めて、5編のお話が収録されていて、1編を読むのにかかるのは、5分弱。

寝る前に1話ずつ読むにもちょうどいい。

どのお話が好き?と聞いたら、全部!だそうですが、『おてがみ』に出てくるかたつむりくんが特に気に入ったらしい。息子らしくてニヤニヤ。

 

あったかくてこんなにも愛情深いのに、全然かしこまってなくて、笑えるのが、いい。

 

ああ、本当に、いい。

 

 

 

 

 

このブログも今日で開設から1年。

 

☟ブログの最初の記事です。もしよかったら昔の記録も読んでみてね!

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最初はとにかく記事をたくさん書き溜めたくてものすごいスピードで書き続けていたけど、もはや思いっきりペースダウンしていて、ごめんなさい。笑

 

…というのも、実は、第2子を妊娠し、体調の優れない日が続いた時期があって、無理しないペースで、と思っていたらこんなにノロマな感じになってしまったのでした。

おかげさまで、今日から産休。予定日は5月の半ば。ゆったり過ごしながら、少しずつブログも充実させていきたいなぁと思います。生まれたらまた更新が途絶えてしまうかもしれないけど、NEWベイビーとの記録も、どうか楽しみにしていただけたら嬉しいです。

年長になる息子氏は、初めての兄弟にドキドキしながらも、とっても楽しみに待ってくれて、そのお兄ちゃんぶりも楽しみな母であります。

 

 

『ふたりはともだち』の冒頭に収録されている『はるがきた』は、春の訪れにぴったりのお話。

 

我らが宮城県はコロナで大変なことになってしまって、面会はもちろん、少し前には再開するかも、と言われていた立ち合い出産もできなくなってしまい、本当に孤独な産前産後を過ごすことになってしまいそうだけれど…命を授かることができたことに心から感謝して、とにかく母子ともに健康に出産ができるように祈りながら、今だけのゆったり引きこもり生活を味わいたいと思います。

 

「ばかな こと いうなよ。

きみが 見ているのは

4月の すきとおった 

あたたかい ひかりなんだぜ。」(『はるがきた』本文より)

 

そうだね!かえるくん!

このあたたかい光からいっぱいパワーをもらいながら、顔を上げて背筋伸ばして、一歩踏み出していこう!!!

 

さあ!4月だよ!!

新しい1年のはじまりだよ!!

 

皆様にも、たくさんの素敵なことがありますように!!!

 

『ふたりはともだち』 1972年

発行所 文化出版局

作 アーノルド・ローベル/訳 三木 卓