『よるのさかなやさん』 穂高順也・文 山口マオ・絵
ページを開けば、タイ・タコ・カニ・イカ・サンマ・ホタテ・ウニ…
「ここの さかなは、
いつも ピチピチ しんせんで
まるで いきているみたい」(本文より)
と、大評判の魚屋さん。
ところが、夜になって店じまいをすると…なんと、魚たちは”死んだふり”をやめて、ひょっこりひょこひょこ店を飛び出し、のびのび自由に遊び始めるのです…!
お魚好きの息子。行きつけのスーパーの魚コーナーではいつも魚を覗いていく。
そういえば、少し前までは大きな声で「すごぉ~い!」とか「おっきいねぇ!!!」とか、ちょっと恥ずかしくなるようなオーバーリアクションで感動を表現していたが、最近は静かにぐるっと一周して、じーっと見つめると、さらっとその場を離れていくようになった気がする。いや、もちろん、必ず覗きに行く様子からして、お魚には興味があるし、都度、彼なりに感動しているのだとは思う。ただ、THE☆小さい子、みたいにキャッキャしなくなってきたなぁ。成長する、というのは、そういうことなのかなぁ。もう年長だもんなぁ…うむむ…愛しさと切なさと心強さと。いや、ま~だまだ無邪気なんですけどもね。
さて、みんなが寝静まった後、実は、〇〇は〇〇してます!!的な世界観!
おもちゃのチャチャチャ!的な!
わくわくするよねぇ~!
子どもの頃、お雛様はいつも人間に聞こえないくらいの小さな声でおしゃべりをしている、というお話を読んで、七段飾りの前に正座してお雛様を眺めながら耳を澄ませたことを思い出した。
お魚たちが、野球したり、かくれんぼしたり、夜空を泳いだり…
そんな世界があったら、どんなに楽しいだろう。
そして、そんなこと、お店のおじさんは知らないんだろうな、という、ヒミツのナイショ感もドキドキワクワクする。
寝る前に読めば、今頃、お魚たちは動き出す準備をしているのかなぁ、と思いを巡らせ、夜の世界でのびのび遊ぶお魚の夢が見られそう。
集団でサクっと読み聞かせる1冊にも良さそうです。
絵は、わにわにシリーズの山口マオさん。
ゴツゴツと力強い版画の世界が、「魚屋」という舞台にえらく映える。そしてやっぱりコミカルで、な~んか、オシャレ。色遣いが、いいよなぁ。
息子は、最後の朝のシーンで、お店に戻り損ねたタコを見つけて、ゲラゲラ笑っていました。
探してみてねっ!
『よるのさかなやさん』 2016年
発行所 文溪堂
文/穂高順也 絵/山口マオ