絵本ライブラリー 読む、残す、思い出す

2020.4.1スタート。元小学校教諭,小3&3歳兄弟育児中の筆者が,読み聞かせをした絵本を中心に書籍の記録・紹介を行っています。自分と、子どもたちと、本との軌跡を記しておきたい。筆者の肌感覚によるカテゴライズもしております。昔の記事も振り返って楽しんでもらえるブログを目指したい。

せかいいちのいちご

『せかいいちのいちご』 作 林木林 絵 庄野ナホコ

 

香さんセレクション3冊目!

 

 

表紙には、いちごを愛おしく眺める白くま。

パステルピンクの背景が、とってもきれい。

 

ある日、白くまの元に

「いちご おとどけ いたします」

という手紙が届く。

 

かつて一度だけ見た、人間の子どもがはしゃぎながら美味しそうに食べていた、“いちご”。

夕焼けよりも赤い実がつやつや輝いていた、“いちご”。

 

それはそれは楽しみにいちごを待っていると、ついに、リボンのかけられた美しい箱の中に、いちごが一粒入って白くまの元に届く。白くまはいちごの香りに浮足立ち、うっとりと見つめ、夢見心地でいちごを愛でた。

 

次の年には2粒、その次の年はもっと、その次の年も、その次の年にも…白くまの元には毎年いちごが届き、その数は段々と増えていって…

 

 

 

とにかく絵が、色が、美しい~!表紙と裏表紙の内側の、パステルピンクに縁どられた雪原の絵が、すごく素敵なの。しろくまのお洒落で丁寧な暮らしもとっても素敵でうっとりしてしまう。

 

白くまは、とにかく可愛い。乙女。きゅん!表情がすごく魅力的。実は爪が鋭いのもいい。

 

そこに映える、白くまのはしゃぎっぷりを制するかのような淡々としたフォント。

滲む、倦厭、怠惰。

とっても可愛いのに、やっぱりこれは、オトナな雰囲気の絵本だ…!

 

いちごのお花もすごく魅力的に描かれている。いちごもバラ科よね?やっぱり、なんでしょう、白くて小さくて可憐なのに、ちょっとギザギザした葉や、がくがあって…それらが、お話の世界にちょっと危険な感じを纏わせてくれている気がする。

 

 

 

私にとっての、“せかいいちのいちご”は、何だろう。

 

夢にまで見たもの。待ちわびたもの。

 

虜になり、心酔したもの。

 

 

もう、手に入らないもの。

 

 

 

 

 

心躍り、くすぐられ、チクっと痛む。もしかしたら、グサっと?

 

これまでは、手に入れることばかり必死に考えてきたけれど、手放すことも、少しずつ考えるようになった、今日この頃。

 

もう戻れないあの頃、が、増えていく、今日この頃。

 

それさえも、ありのままに受け入れ、楽しんでいけるようになるであろう、これから。

 

 

 

子どもも楽しめるけれど、この真髄は、大人にこそ、沁みる。

 

まさに「大人のための」絵本、かも。

 

 

 

先日、香さんと念願のリモートおしゃべりをしました!

お顔を見てお話をする、ということがどんなに大事で、尊いか。

ここしばらく家族か病院関係の人としか喋っていない私。

香さんの柔らかな笑顔に癒され、元気が満ち満ちてきたよ~!

 

皆さんも、大切な人と、お顔を見て、繋がれますように。

 

直接会える日が、早く、来ますように。

 

『せかいいちの いちご』 2018年

発行所 小さい書房

作 林木林 絵 庄野ナホコ

 

ねつでやすんでいるキミへ

『ねつでやすんでいるキミへ』 しりあがり寿

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こちらも、香さんに貸していただいた1冊。

 

これは、実は前に香さんに読んでもらったことのある本なのです。

長男の育休中、職場復帰の少し前のことだったと思う。児童館で香さんが大人のための読み聞かせをするとのこと。しかも、なんと有り難いことに、子どもたちはスタッフの方が見ていてくださって、集まった大人たちは香さんの読み聞かせにゆっくりと耳を傾けることができる…!

久々にしばし息子を手放して、ただ、目の前のお話に没頭する…嬉しくも悲しくも息子とベッタリでひと時も離れられない毎日を過ごしていた私には、それはそれは、貴重な時間だった。

 

『ねつでやすんでいるキミへ』は、その時、何冊か読んでいただいた本のなかで、一番印象に残っていた本。

あの時、仕事に復帰する前に聞いてもらえてよかった、と香さんが言ってくださったことを覚えているのだけれど、今回、二人目が産まれる前の私にも、再び香さんはこの本を選んでくれた。

 

 

「おおきな ふとんの なかで

しずかに ねいきを たてている キミ

 

にぎった てが とっても あつい

まんまるの ホッペタが とっても あかい」(本文より)

 

子どもが熱を出し、仕事を休んで看病している、パパかな。ママかな。

目の前で寝ている我が子を眺めながら、キミの頑張り、忙しく過ごしている自分への反省、この世の中のこと、これからのキミのこと、そして、何よりもキミが大好きだってこと…いろんなことに想いを巡らせていく。

 

 

 

そうそう、そうなの。どうしてかなぁ。みんな、そうなのかなぁ。

眠っている我が子を見ていると、いろんな想いが駆け巡っていく。

ぽっかりと空いた時間、ふと訪れた心の隙間に、いろんな感情が流れ込んでくる。

日常のバタバタとした時間が嘘のように、じんわりと、反省と愛しさが溢れてくる。

 

 

かつて、職場復帰して長男の保育所生活が始まった時、それまでほとんど体調を崩したことがなかった彼も度々熱を出し、お迎え&病院の日々が始まった。

ただでさえブランクがあるのに、迷惑をかけてしまって申し訳ないなぁと思っていると、先輩ママの先生方は、

「親が忙しいときに限って子どもは熱を出すのよ」

「それはお母さんも強制的に休めっていうことなのよ~」

と励ましてくれた。

それでもなかなか続けて休むわけにもいかず、夫と交代したり、両家の両親に助けてもらったり…今思えば助けてもらえる状況にあったことは本当にありがたく、そうやって助けてもらって成り立つ生活を覚悟して進んでいくしかなかったのだと思うけれど、やっぱりその不安定さが、私には苦しかったかな…人間、都合の悪いことは忘れてしまうというけれど、復帰後のことは、本当に、よく覚えていない…

 

でも、やっぱり、お迎えに向かう運転している時の心情、病院を終えて薬を飲ませて寝かせている静けさ、みたいなものは、この本を読んでいると手に取るように思い出せるのよね。

 

そして、子どもの頃、自分が熱を出して休んでいたとき、そばにいてくれたお母さんのことも…。

 

 

そういえば、しりあがり寿、と聞いて最初に思い出したのは、子どもの頃、幼馴染の家でやったパソコンのゲームのキャラクターデザインをしてた人だ~、ってこと。そば屋の店主になって、お客さんの注文通りに商品を届けるゲームだったと思う。すごく単純なゲームだったけど、届けるのが遅くなるとお客さんが怒って帰っちゃうのが面白くて、結構ハマってたのよね。しりあがり寿さんの絵はとにかく抜けてて面白くて、何ともドライなイメージだったので、こんなにも温もりのある絵本も描かれるのだなぁと、そういう意味でも印象に残っていたのでした。

 

 

今は、絶賛、次男の赤ちゃん育児の真っ最中。

必死に泣いて、必死に飲んで、ぐんぐん大きくなっていく彼。

お顔の両脇にまあるく手を握って眠っている姿は、やっぱり、愛しさを、いろんな想いを、運んでくれる。

 

もうすぐ起きるかなぁ。

起きたらまた、おっぱい。抱っこ。

…どらどら、もういっちょ、やってやるかぁ。

 

 

 

『いつか、きっと』

を読んだときに感じた想いにも通じるような、強く、深い、愛。

 

きみが、きみが、きみたちが、心の底から大好きだよ。

 

とっても、あたたかくて、愛に溢れた、心を震わせてくれる一冊です。

 

『ねつでやすんでいるキミへ』 2013年

発行所 岩崎書店

作・絵…しりあがり寿

 

 

いつか、きっと

『いつか、きっと』 

ティエリ・ルナン 文 オリヴィエ・タレック 絵 平岡 敦 訳

 

次男が産まれる少し前のこと。 

「大人のための絵本よみやさん」の香さんが、再びお友だち限定で絵本の貸し出しをしているとのこと。

お願いしようかなぁ、でも、もしかしたらそろそろ産まれるかなぁ…と尻込みしていたら、なんと香さんから別件でお手紙が!封筒の中には、香さんの地元の安産祈願のお守りも…。

今思えば出産が近づいていたからなのか、心身ともに調子が落ち込んでいたのだけれど、お手紙を読んだら、もう、嬉しくて、嬉しくて…とにかくお願いしちゃおう!!と、お返事と同時に貸し出しをお願いし、香さんセレクトの3冊の絵本が、我が家に届いたのでした。

ところが結局その後1週間くらいで息子が産まれてしまって、お返しするのがとんでもなく遅くなってしまったという結末…本当にゴメンナサイ!!

 

でも、やっぱり、貸していただいて、本当によかった。

 

絵本たちと出会ったときの想いを振り返りながら、少しずつ、ご紹介していきたいと思います。 

 

 

1冊目は、『いつか、きっと』。

作者は、フランス生まれのティエリ・ルナンさん。教育の仕事に携われた後、作家となられたのだそう。 

表紙には、赤地に咲き乱れる花々の真ん中にぽつりと座っている一人の子ども。

 

 

子どもは、世界を眺めて、考えていた。

 

「戦う兵士たちがいる。

それを見て子どもは思った。

いつか、きっと、軍服を明るく塗りかえよう。

銃の先を、小鳥の止まり木に、

羊飼いの笛にしてしまおう。」

 

「飢えに苦しむ人がいる。

それを見て子どもは思った。

いつか、きっと、投げなわで雲をあつめ、

砂漠に雨をふらせよう。

とうとうと流れる川をひこう。」 ・・・(本文より)

 

畳みかけてくる悲しくなるような現実と、それを豊かに、たくましく、突き返す想像力。

しなやかで、決して折れることのない、希望。

 

グサグサと胸に突き刺さってくる言葉たちと、全てをすくい上げるようなドラマチックなラスト。

 

 

 

…そうだ。 

私も、子どもの頃は、いつも、平和を、愛を、願っていた。信じていた。誰もが悲しい思いをしない世界を、本気で描いていた。皆で手を繋ぎ、仲良く暮らす…どうして大人はそんな簡単なことができないのかと思うことさえあった。

 

大きくなってくると、いろんな考えをもつ人がいることが分かって、全員が全員、分かり合えることはとても難しいことなのだと思うようになった。

自分の愛しいもの、大切なもの、誇りのために、犠牲を払うのは仕方のないことなのかもしれないと、諦めることができるようになってしまった。

 

 

それでも、また、新しい子どもは、命は、よどみなく、希望をもって生まれてくる。

 

明るい未来を、描いていく。

 

悲しい世界にも「いつか、きっと」光が差すことを信じて、何度でも、喰らいついていく。

 

その希望が続いていく限り、やっぱり、どうしても、世界は、素晴らしく、美しいのだと思う。

 

 

 

缶コーヒーのBOSSのCMに「このろくでもない、すばらしき世界」というキャッチコピーがあったけれど…本当にもう、素敵な言葉だよねぇ。かっこいい。

 

…うん、そうだ。なんか、そんな感じ。

 

 

 次男が産まれる前に読み、産まれた後にも読ませていただき、このタイミングで読めたことが、すごく貴重な一冊でした。

 

絵本をおすすめしていただくこと、って、贈り物をいただくことなんだなぁ。

 

 

 

世知辛くも美しいこの世界に、生まれてきた君よ。

 

厳しさに、虚しさに、打ちひしがれることがあっても、どうか希望を、愛を、温もりを携えながら、強く、たくましく、生きていってね。

 

私も、負けずに、そうありたいと、思います。

 

『いつか、きっと』 2010年

発行所 光村教育図書

文 ティエリ・ルナン  

絵 オリヴィエ・タレック

訳 平岡 敦

 

おへそのひみつ

保健『おへそのひみつ』 やぎゅうげんいちろう・さく

おへそのひみつ!

 

ピカピカごろごろ…かみなりさんがおへそを取りにやって来た!

かみなりがおへそを取るって本当?

君たちのおなかにも、ちゃんとおへそは、ある?

そもそもおへそって、何なのだろう…?

 

 

この本には、お母さんと赤ちゃんをつなぐおへそのひみつが、元気いっぱいの子どもたちの声とともに、ユーモラスに描かれている。小学校2年生の生活科で自分の成長を振り返る学習をした時に紹介した本のうちの1冊。

 

私も子どもの頃読んだ気がするなぁ~と思っていたけれど、発行年を見たら、かがくのともに登場したのが1998年。その時点で私は小学校高学年。傑作集で出版されたのが2000年だから、中学生のときに読んだ…のではない気がするので、この本ではなかったのだなぁ~と思う。が、やぎゅうげんいちろうさんの絵には間違いなく見覚えがあって、調べてみたら、もしかしたら『おっぱいのひみつ』だったかも。

 

とにかく、やぎゅうげんいちろうさんの絵は、言葉は、世界は、唯一無二で、なんだか、心に残る。癖になる。

 

 

赤ちゃんが生まれる、ということは、子どもにとっては謎に包まれた興味深い世界だと思うけれど、どの時期にどのくらい踏み込めば良いのかよく分からないし、ザ☆性教育、な~んて、何となく敬遠してしまうもの。私も、6歳の息子に何か赤ちゃんのことは教えたいけれど、今、あえて出産の具体的な話をする必要はないかなと思っていたので、この本がいいかも!と思って手に取ってみました。

 

赤ちゃんがお腹の中でどんな風に過ごしているのか、どうやって酸素や栄養をもらっているのか、どうやって”おへそ”はできたのか…

難しい言葉は少し噛み砕きながら一緒に読むと、息子もへぇ~!とうなずきながら聞いていた。これまでもおへその話はしたことがあったけれど、絵を見てさらにイメージが湧いたみたい。マジメすぎなくて、笑いながら読める雰囲気も、いい。

 

長谷川義史さんの『おへそのあな』

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を読んでいたこともあって、息子はママのおへそから赤ちゃんが覗いている、と今も信じて毎日私のおへそに向かって話しかけているわけだけれど、その奥の、ママのお腹の中が今どんな風になっているか、というのは、少し想像できるようになったみたい。

 

『おへそのあな』のときにも書いたけど…

お母さんと一緒にいても、いなくても、顔を、声を、知らなくても…おへそは、誰もがみんな、お母さんのお腹にいた、証拠なんだよね。

 

お母さんと一緒にいられること、お母さんとして息子と一緒にいられること。その幸せを、有り難さを、かみしめたいです。

 

 

 

 

 

 

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…と、ここまで、産前に書いており、まさかまだまだ産まれるまいと、その後投稿する予定でいたのだけれど、まさかマッカーサーまっさかさま(注:よかったら『まさかさかさま』の文章をご参照ください)、ベイビー様が産まれてしまいまして!

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晴れてお兄ちゃんとなった息子氏(今後、「長男」と呼ぼう)、私が退院していろいろおしゃべりしていた時に、赤ちゃんのおへそはどうなっていたの?と聞いてきたので、ニューベイビー(今後、「次男」と呼ぼう)の産まれたばかりのへその緒が繋がっている写真を見せたら、ちょっとびっくりしながらも、なんだか興味深そうに「このひもがママの栄養を赤ちゃんにあげていたんでしょ?」と言っていた。ふむふむ。やっぱり、産まれる前に一緒に読めてよかったなぁ。

 

その後、次男の乾いたへその緒がポロリと取れると、「おへそのミイラ」と言って何度も箱を覗いて「かわいいなぁ」と眺めていました。

…か、かわいい…?…黒っぽくてクチャクチャしてて、何とも奇妙な物体だと思うんだけども…そうかぁ。かわいいのかぁ。待ちに待った弟のおへそだもんなぁ。

 

ちなみにパパがおむつ替えしてる時におへそが取れたんですけどね、なんとね、彼ね、オムツにくるんでポイしようとしたからね!?

一緒に見てる時で本当によかったよっ!!!

 

というわけで、我が家の「おへそのミイラ」は2つになった!

幸せなことです。神様、本当に、本当に、ありがとう。

 

ゆっくりペースになりますが、体調を見ながら少しずつ更新したいと思っているので気長に待っててくれたら嬉しいです。

 

まずは永遠なるオッパイ&オムツの繰り返し!お母ちゃん、頑張るね~!

 

『おへそのひみつ』 2000年(かがくのともは1998年)

発行所 福音館書店

やぎゅうげんいちろう さく

 

 

【祝】生まれました!

更新滞ってますが、じ、実は、、、

 

その間に第二子、産まれてました!!

 

早すぎーーー!!!!!

 

予定日は5月半ば過ぎ。早産にならないギリギリのラインを時間単位で攻めてきた次男氏。すごすぎるやろーー

 

 

 

 

退院し、家族で一緒にいられる時間の大切さを、今、じゅわじゅわに噛みしめております。

 

諸々、絵本とともに改めて更新していきたいと思います。

取り急ぎ、ご報告まで〜!

 

無事に産まれて本当によかった!

おめでとう。ありがとう。

【雑記】子ども読書の日2021

本日、4月23日は「子ども読書の日」でした~!

キッズたち、昔キッズだった貴方も、読書、楽しみましたか~~??

 

子ども読書の日」とは??…ぜひこちらの記事を読んでから、だうぞっっ!

bg8qp.hatenablog.jp

 

今日から5月12日までの約3週間は「こどもの読書週間」。

去年はブログ書き始めたばっかりで、燃え上がって毎日記事書いたりしてたけど、今年は息子と読書を楽しみつつ、自分を追い込まずにのんべんだらりと楽しく過ごそうと思う。へへ~。

 

 

 

1年間読み聞かせとその記録をしてきて、何か変わったことがあったかなぁと思い返してみる。

 

うーむ、息子が自分でも絵本を読むことが増えてきたかも!

 

まだまだ読んでもらうのが大好きだけれど、自分でお気に入りの本を読み返す姿が見られるようになってきました。だから、あ、あの本がお気に入りなんだ、って、すぐ分かる。

これからも素敵な本にたくさん出会っていくことができますように。

図書館様、本当にありがとうございます。これからもよろしく!!!!!

 

 

 

祝!私のおじいちゃんも96歳になりましたよ~!おめでとー!ありがとー!

 

 

そういや、ちゃんと観なかったけど、今日のあさイチで、サン・ジョルディのことやってたかも!観た方、いらっしゃいましたか??

 

愛と、本と。

 

ロマンティックなフライデーナイトをお過ごしくださいませ。

ぼくのばしょなのに

『ぼくのばしょなのに』 刀根里衣

 

私の素敵なお友達、大人のための絵本よみやさんをしている香さん

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が、もうすぐお兄ちゃんになる息子のために読んであげて、とおすすめしてくださった1冊。

 

 

ペンギンのククーは、パパとママのお腹の下が大好き。パパがお魚を取りに行く時は、ママの下。ママがお魚を取りに行く時は、パパの下。

 

「ここは ぼくだけの たいせつなばしょ」(本文より)

 

ところが、ある日、新しいたまごが生まれて、ぼくの場所が取られちゃった。

毛布にくるまっていじけたククーはまんまるたまごになって閉じこもってしまうのだけれど…

 

 

…この本は、なんだか、もう、ギューってなりながら読みました。

最近6歳になった我が家の息子。生まれてからずーっと、パパもママも、君のことばっかり見てきた。パパがいなければママと、ママがいなければパパと、みんな一緒のときは3人で。べったりべたべた、いつもくっついていたよね。

でも、もうすぐ赤ちゃんが生まれたら、きっと、今までみたいにパパとママをひとり占めすることはできなくなっちゃう。今までの3人の暮らしとは、きっと、大きく、変わってしまう。

 

兄弟に憧れていた息子は、私の妊娠が分かったとき、とっても、とっても喜んでくれた。でも、持ち上げて抱っこすることができなくなって、つわりで調子も悪くて、我慢ばっかりさせていた頃、ストレスからか、息子はものすごく頻尿になってしまって…好きなだけトイレに行かせて、時間をかけて少しずつ良くなって、今は落ち着いているけれど、彼も嬉しい気持ちと、不安な気持ちが、モヤモヤぐるぐるしていたのかも。

かくいう私も、一人目の妊娠のときは、本当にいつも感情豊かに、いろんなことを喜び、悲しみ、お腹に話しかけたりしていたというのに、今回はそんな余裕もなく、ただ忙しく、具合悪く、過ぎていく日々…こんな調子で、長男と同じように愛を注げるのだろうか、1人だっていっぱいいっぱいだったのに、子どもが2人になって、果たして私はやっていけるのだろうか。

なるようになる、やるしかない、と腹をくくっていたつもりでも、6年のブランクを経て、もう1人、イチから育てる、ということへの不安や重責みたいなものがぐるぐるして、ものすごく不安になった時期があった。

 

 

 

お話の中で、いじけているククーにパパとママはクイズを出す。

 

「だい1もん。ククーの いちばんすきなたべものは、

”おさかなパイ”だって しっているのは だーれだ?」(本文より)

 

それを聞いたククーは、小さな小さな声で「………パパとママ。」と答える。

 

君に会えない間寂しい思いをしているのは?

君の成長を願っているのは?

君にぎゅーってしたいと思っているのは…?

初めて一緒に読んだときから、息子は自然と「……パパとママ。」のセリフを読んでくれた。ククーに自分を重ねていたのかなぁ。

裏表紙には、たまごから生まれた赤ちゃんと遊ぶククーの姿。それを見て息子は「赤ちゃん生まれたんだね!」と嬉しそうだった。

 

遠くで読み聞かせを聞いていた夫も「…いい絵本だね」とポツリ。

気持ちがふわふわしている時に読んだら、泣いちゃいそうだ。

柔らかい絵と、愛情たっぷりの言葉。

本当に、本当に、今の息子と私にぴったりの、目の前の君にだいすき、を伝えられる絵本でした。

 

 

予定日までひと月を切った今は、コロナ禍での出産・育児への不安は大きかれど、それ以上に、赤ちゃんに会えることがとっても楽しみになっている自分がいる。息子も、私が入院してしばらく会えなくなってしまうことへの不安はあるみたいだけれど、その間ばーばのお家に行けることを楽しみにしているし、何より赤ちゃんに会いたくて、「早く生まれたらいいのに~!」「ママのお腹、かわいいなぁ~」「赤ちゃんに子守唄を歌ってあげる」と、毎日、毎日話しかけてくれている。

きっと生まれたら、私も、息子も、またバタバタといろんなことに悩むのだろうけど…今は、このドキドキのひとときを、楽しんで、味わって、息子との時間をかみしめていたいと思います。

 

 

生まれて少し経って、息子がさみしい思いをしていることがあったら、また読んであげたいな。

 

そして、君も、赤ちゃんも、だいすきだよ、って、伝え続けていきたいと思う。

 

『ぼくのばしょなのに』 2018年

発行所 NHK出版

著者 刀根里衣

 

 

ベンのトランペット

『ベンのトランペット』 R.イザドラ 作/絵 谷川俊太郎

 

かっこいい表紙!!

 

グレー地に銀と黒。人のフォルムが、構図が、めちゃくちゃかっこいい。

 

表紙を開くとギザギザの波。これはきっと、トランペットの音。

 

そして、なんじゃこりゃ…中の絵は、もっと、もっと、とてつもなく、かっこよかった…!!!!

 

 

 

夜、非常階段に座って向かいのジグザグ・ジャズ・クラブから聴こえてくる音楽に耳を澄ます少年ベンは、トランペットを吹いている。…と言っても、貧しくて本物のトランペットが買ってもらえないベンの手の中は空っぽ。それでも彼は、いつも音楽の中に心身を浸してトランペットを「吹き続ける」のだけれど…

 

 

あぁ、何を使って描いているのだろう、緻密な線。迫力のある構図。オシャレ。オシャレ!

全ページ白黒なんだけれど、まるでジャズが聴こえてくるかのような、汗のしぶきが、熱が、伝わってくるかのような、すごい臨場感。

ベンの高揚や寂しさも感じつつ、めちゃくちゃかっこいい世界を通り抜けて、最後のページには、うわぁ~やられたぁぁぁ~~~~…という感じ…なんだ、語彙力無さすぎだけども!笑

ブラックカルチャーが好きな旦那も、ページをペラペラめくって、これ、かっこいいな…と漏らしていました。

 

 

作者はアメリカのレイチェル・イザドラさん。プロのバレリーナだったけれど、足の怪我で引退して作家となったのだそう。あぁ、やっぱり、芸術の、舞台の、第一線に触れていた方なんだな、と、納得してしまう。それを経験していなければ、とても描ききれないような、感情の動き。熱のある作品だなぁと思う。

しーん、と、広がる詩的な世界観は、谷川俊太郎さんの訳によるものなのかな。

 

 

ちょっと大人向け、というか、子どもにとっては好みが分かれる作品かもしれないけれど、残る人にはガツーンと心に残るような1冊だと思う。音楽が、ジャズが大好きな方へのプレゼントにもいいかも。

 

それにしたって、ジグザグ・ジャズ・クラブって、いい名前すぎやしませんか!

ジャズバンドを組んだ暁には、ジグザグ・ジャズ・クラブっていう名前にしたい。

わたし、ジャズピアノに挑戦したいと思っているのだけれど…何から始めればいいかしら。

 

『ベンのトランペット』 1981年

発行所 あかね書房

作者 レイチェル・イザドラ

訳者 谷川俊太郎