『ねつでやすんでいるキミへ』 しりあがり寿
こちらも、香さんに貸していただいた1冊。
これは、実は前に香さんに読んでもらったことのある本なのです。
長男の育休中、職場復帰の少し前のことだったと思う。児童館で香さんが大人のための読み聞かせをするとのこと。しかも、なんと有り難いことに、子どもたちはスタッフの方が見ていてくださって、集まった大人たちは香さんの読み聞かせにゆっくりと耳を傾けることができる…!
久々にしばし息子を手放して、ただ、目の前のお話に没頭する…嬉しくも悲しくも息子とベッタリでひと時も離れられない毎日を過ごしていた私には、それはそれは、貴重な時間だった。
『ねつでやすんでいるキミへ』は、その時、何冊か読んでいただいた本のなかで、一番印象に残っていた本。
あの時、仕事に復帰する前に聞いてもらえてよかった、と香さんが言ってくださったことを覚えているのだけれど、今回、二人目が産まれる前の私にも、再び香さんはこの本を選んでくれた。
「おおきな ふとんの なかで
しずかに ねいきを たてている キミ
にぎった てが とっても あつい
まんまるの ホッペタが とっても あかい」(本文より)
子どもが熱を出し、仕事を休んで看病している、パパかな。ママかな。
目の前で寝ている我が子を眺めながら、キミの頑張り、忙しく過ごしている自分への反省、この世の中のこと、これからのキミのこと、そして、何よりもキミが大好きだってこと…いろんなことに想いを巡らせていく。
そうそう、そうなの。どうしてかなぁ。みんな、そうなのかなぁ。
眠っている我が子を見ていると、いろんな想いが駆け巡っていく。
ぽっかりと空いた時間、ふと訪れた心の隙間に、いろんな感情が流れ込んでくる。
日常のバタバタとした時間が嘘のように、じんわりと、反省と愛しさが溢れてくる。
かつて、職場復帰して長男の保育所生活が始まった時、それまでほとんど体調を崩したことがなかった彼も度々熱を出し、お迎え&病院の日々が始まった。
ただでさえブランクがあるのに、迷惑をかけてしまって申し訳ないなぁと思っていると、先輩ママの先生方は、
「親が忙しいときに限って子どもは熱を出すのよ」
「それはお母さんも強制的に休めっていうことなのよ~」
と励ましてくれた。
それでもなかなか続けて休むわけにもいかず、夫と交代したり、両家の両親に助けてもらったり…今思えば助けてもらえる状況にあったことは本当にありがたく、そうやって助けてもらって成り立つ生活を覚悟して進んでいくしかなかったのだと思うけれど、やっぱりその不安定さが、私には苦しかったかな…人間、都合の悪いことは忘れてしまうというけれど、復帰後のことは、本当に、よく覚えていない…
でも、やっぱり、お迎えに向かう運転している時の心情、病院を終えて薬を飲ませて寝かせている静けさ、みたいなものは、この本を読んでいると手に取るように思い出せるのよね。
そして、子どもの頃、自分が熱を出して休んでいたとき、そばにいてくれたお母さんのことも…。
そういえば、しりあがり寿、と聞いて最初に思い出したのは、子どもの頃、幼馴染の家でやったパソコンのゲームのキャラクターデザインをしてた人だ~、ってこと。そば屋の店主になって、お客さんの注文通りに商品を届けるゲームだったと思う。すごく単純なゲームだったけど、届けるのが遅くなるとお客さんが怒って帰っちゃうのが面白くて、結構ハマってたのよね。しりあがり寿さんの絵はとにかく抜けてて面白くて、何ともドライなイメージだったので、こんなにも温もりのある絵本も描かれるのだなぁと、そういう意味でも印象に残っていたのでした。
今は、絶賛、次男の赤ちゃん育児の真っ最中。
必死に泣いて、必死に飲んで、ぐんぐん大きくなっていく彼。
お顔の両脇にまあるく手を握って眠っている姿は、やっぱり、愛しさを、いろんな想いを、運んでくれる。
もうすぐ起きるかなぁ。
起きたらまた、おっぱい。抱っこ。
…どらどら、もういっちょ、やってやるかぁ。
『いつか、きっと』
を読んだときに感じた想いにも通じるような、強く、深い、愛。
きみが、きみが、きみたちが、心の底から大好きだよ。
とっても、あたたかくて、愛に溢れた、心を震わせてくれる一冊です。
『ねつでやすんでいるキミへ』 2013年
発行所 岩崎書店
作・絵…しりあがり寿