『ぼくのばしょなのに』 刀根里衣
私の素敵なお友達、大人のための絵本よみやさんをしている香さん
が、もうすぐお兄ちゃんになる息子のために読んであげて、とおすすめしてくださった1冊。
ペンギンのククーは、パパとママのお腹の下が大好き。パパがお魚を取りに行く時は、ママの下。ママがお魚を取りに行く時は、パパの下。
「ここは ぼくだけの たいせつなばしょ」(本文より)
ところが、ある日、新しいたまごが生まれて、ぼくの場所が取られちゃった。
毛布にくるまっていじけたククーはまんまるたまごになって閉じこもってしまうのだけれど…
…この本は、なんだか、もう、ギューってなりながら読みました。
最近6歳になった我が家の息子。生まれてからずーっと、パパもママも、君のことばっかり見てきた。パパがいなければママと、ママがいなければパパと、みんな一緒のときは3人で。べったりべたべた、いつもくっついていたよね。
でも、もうすぐ赤ちゃんが生まれたら、きっと、今までみたいにパパとママをひとり占めすることはできなくなっちゃう。今までの3人の暮らしとは、きっと、大きく、変わってしまう。
兄弟に憧れていた息子は、私の妊娠が分かったとき、とっても、とっても喜んでくれた。でも、持ち上げて抱っこすることができなくなって、つわりで調子も悪くて、我慢ばっかりさせていた頃、ストレスからか、息子はものすごく頻尿になってしまって…好きなだけトイレに行かせて、時間をかけて少しずつ良くなって、今は落ち着いているけれど、彼も嬉しい気持ちと、不安な気持ちが、モヤモヤぐるぐるしていたのかも。
かくいう私も、一人目の妊娠のときは、本当にいつも感情豊かに、いろんなことを喜び、悲しみ、お腹に話しかけたりしていたというのに、今回はそんな余裕もなく、ただ忙しく、具合悪く、過ぎていく日々…こんな調子で、長男と同じように愛を注げるのだろうか、1人だっていっぱいいっぱいだったのに、子どもが2人になって、果たして私はやっていけるのだろうか。
なるようになる、やるしかない、と腹をくくっていたつもりでも、6年のブランクを経て、もう1人、イチから育てる、ということへの不安や重責みたいなものがぐるぐるして、ものすごく不安になった時期があった。
お話の中で、いじけているククーにパパとママはクイズを出す。
「だい1もん。ククーの いちばんすきなたべものは、
”おさかなパイ”だって しっているのは だーれだ?」(本文より)
それを聞いたククーは、小さな小さな声で「………パパとママ。」と答える。
君に会えない間寂しい思いをしているのは?
君の成長を願っているのは?
君にぎゅーってしたいと思っているのは…?
初めて一緒に読んだときから、息子は自然と「……パパとママ。」のセリフを読んでくれた。ククーに自分を重ねていたのかなぁ。
裏表紙には、たまごから生まれた赤ちゃんと遊ぶククーの姿。それを見て息子は「赤ちゃん生まれたんだね!」と嬉しそうだった。
遠くで読み聞かせを聞いていた夫も「…いい絵本だね」とポツリ。
気持ちがふわふわしている時に読んだら、泣いちゃいそうだ。
柔らかい絵と、愛情たっぷりの言葉。
本当に、本当に、今の息子と私にぴったりの、目の前の君にだいすき、を伝えられる絵本でした。
予定日までひと月を切った今は、コロナ禍での出産・育児への不安は大きかれど、それ以上に、赤ちゃんに会えることがとっても楽しみになっている自分がいる。息子も、私が入院してしばらく会えなくなってしまうことへの不安はあるみたいだけれど、その間ばーばのお家に行けることを楽しみにしているし、何より赤ちゃんに会いたくて、「早く生まれたらいいのに~!」「ママのお腹、かわいいなぁ~」「赤ちゃんに子守唄を歌ってあげる」と、毎日、毎日話しかけてくれている。
きっと生まれたら、私も、息子も、またバタバタといろんなことに悩むのだろうけど…今は、このドキドキのひとときを、楽しんで、味わって、息子との時間をかみしめていたいと思います。
生まれて少し経って、息子がさみしい思いをしていることがあったら、また読んであげたいな。
そして、君も、赤ちゃんも、だいすきだよ、って、伝え続けていきたいと思う。
『ぼくのばしょなのに』 2018年
発行所 NHK出版
著者 刀根里衣