『ベンのトランペット』 R.イザドラ 作/絵 谷川俊太郎 訳
かっこいい表紙!!
グレー地に銀と黒。人のフォルムが、構図が、めちゃくちゃかっこいい。
表紙を開くとギザギザの波。これはきっと、トランペットの音。
そして、なんじゃこりゃ…中の絵は、もっと、もっと、とてつもなく、かっこよかった…!!!!
夜、非常階段に座って向かいのジグザグ・ジャズ・クラブから聴こえてくる音楽に耳を澄ます少年ベンは、トランペットを吹いている。…と言っても、貧しくて本物のトランペットが買ってもらえないベンの手の中は空っぽ。それでも彼は、いつも音楽の中に心身を浸してトランペットを「吹き続ける」のだけれど…
あぁ、何を使って描いているのだろう、緻密な線。迫力のある構図。オシャレ。オシャレ!
全ページ白黒なんだけれど、まるでジャズが聴こえてくるかのような、汗のしぶきが、熱が、伝わってくるかのような、すごい臨場感。
ベンの高揚や寂しさも感じつつ、めちゃくちゃかっこいい世界を通り抜けて、最後のページには、うわぁ~やられたぁぁぁ~~~~…という感じ…なんだ、語彙力無さすぎだけども!笑
ブラックカルチャーが好きな旦那も、ページをペラペラめくって、これ、かっこいいな…と漏らしていました。
作者はアメリカのレイチェル・イザドラさん。プロのバレリーナだったけれど、足の怪我で引退して作家となったのだそう。あぁ、やっぱり、芸術の、舞台の、第一線に触れていた方なんだな、と、納得してしまう。それを経験していなければ、とても描ききれないような、感情の動き。熱のある作品だなぁと思う。
しーん、と、広がる詩的な世界観は、谷川俊太郎さんの訳によるものなのかな。
ちょっと大人向け、というか、子どもにとっては好みが分かれる作品かもしれないけれど、残る人にはガツーンと心に残るような1冊だと思う。音楽が、ジャズが大好きな方へのプレゼントにもいいかも。
それにしたって、ジグザグ・ジャズ・クラブって、いい名前すぎやしませんか!
ジャズバンドを組んだ暁には、ジグザグ・ジャズ・クラブっていう名前にしたい。
わたし、ジャズピアノに挑戦したいと思っているのだけれど…何から始めればいいかしら。
『ベンのトランペット』 1981年
発行所 あかね書房
作者 レイチェル・イザドラ
訳者 谷川俊太郎