『せかいいちのいちご』 作 林木林 絵 庄野ナホコ
香さんセレクション3冊目!
表紙には、いちごを愛おしく眺める白くま。
パステルピンクの背景が、とってもきれい。
ある日、白くまの元に
「いちご おとどけ いたします」
という手紙が届く。
かつて一度だけ見た、人間の子どもがはしゃぎながら美味しそうに食べていた、“いちご”。
夕焼けよりも赤い実がつやつや輝いていた、“いちご”。
それはそれは楽しみにいちごを待っていると、ついに、リボンのかけられた美しい箱の中に、いちごが一粒入って白くまの元に届く。白くまはいちごの香りに浮足立ち、うっとりと見つめ、夢見心地でいちごを愛でた。
次の年には2粒、その次の年はもっと、その次の年も、その次の年にも…白くまの元には毎年いちごが届き、その数は段々と増えていって…
とにかく絵が、色が、美しい~!表紙と裏表紙の内側の、パステルピンクに縁どられた雪原の絵が、すごく素敵なの。しろくまのお洒落で丁寧な暮らしもとっても素敵でうっとりしてしまう。
白くまは、とにかく可愛い。乙女。きゅん!表情がすごく魅力的。実は爪が鋭いのもいい。
そこに映える、白くまのはしゃぎっぷりを制するかのような淡々としたフォント。
滲む、倦厭、怠惰。
とっても可愛いのに、やっぱりこれは、オトナな雰囲気の絵本だ…!
いちごのお花もすごく魅力的に描かれている。いちごもバラ科よね?やっぱり、なんでしょう、白くて小さくて可憐なのに、ちょっとギザギザした葉や、がくがあって…それらが、お話の世界にちょっと危険な感じを纏わせてくれている気がする。
私にとっての、“せかいいちのいちご”は、何だろう。
夢にまで見たもの。待ちわびたもの。
虜になり、心酔したもの。
もう、手に入らないもの。
心躍り、くすぐられ、チクっと痛む。もしかしたら、グサっと?
これまでは、手に入れることばかり必死に考えてきたけれど、手放すことも、少しずつ考えるようになった、今日この頃。
もう戻れないあの頃、が、増えていく、今日この頃。
それさえも、ありのままに受け入れ、楽しんでいけるようになるであろう、これから。
子どもも楽しめるけれど、この真髄は、大人にこそ、沁みる。
まさに「大人のための」絵本、かも。
先日、香さんと念願のリモートおしゃべりをしました!
お顔を見てお話をする、ということがどんなに大事で、尊いか。
ここしばらく家族か病院関係の人としか喋っていない私。
香さんの柔らかな笑顔に癒され、元気が満ち満ちてきたよ~!
皆さんも、大切な人と、お顔を見て、繋がれますように。
直接会える日が、早く、来ますように。
『せかいいちの いちご』 2018年
発行所 小さい書房
作 林木林 絵 庄野ナホコ