絵本ライブラリー 読む、残す、思い出す

2020.4.1スタート。元小学校教諭,小2&2歳兄弟育児中の筆者が,読み聞かせをした絵本を中心に書籍の記録・紹介を行っています。自分と、子どもたちと、本との軌跡を記しておきたい。筆者の肌感覚によるカテゴライズもしております。昔の記事も振り返って楽しんでもらえるブログを目指したい。

ちょっぴりおかしなどうぶつえん

『ちょっぴりおかしなどうぶつえん』 アリソン・ジェイ 作・絵 蜂飼 耳 文

 

やわらかい色、やさしいタッチ。でも、なんか大人っぽい。グラデーションが織りなすしっとりとした質感と、独特なフォルムが、不思議な世界観を醸し出しているように思う。そして、これはどんな技法なのかな。まさか、陶器に描いているのかしら…絵の表面には、美しいひび割れが。ヴィンテージ感。それでまた、特別な感じがするのかもしれない。

この絵を描いているのはイギリスの画家、アリソン・ジェイさん。この本のオリジナルは文字の無い絵本なのだそう。それに詩人の蜂飼耳さんが文をつけたのですって。“はちかいみみ”さん!面白い名前。気になる。

 

 

この動物園は、普通の動物園とはちょっと違う。檻も柵も無く、動物たちが自由に歩き回っている。日曜日にやって来たのは、お父さん、お母さん、お兄ちゃんと私。素敵なお洋服にお弁当。エントランスでは既にたくさんの動物たちがみんなを覗いている。さぁ、素敵な動物園での1日のはじまり、はじまり…!

 

 

なるほど確かに、もともと文字の無い絵本であっただけあって、絵が素敵~!絵だけで十分に楽しめる。ツッコミどころが満載なのです。優しい。美しい。おちゃめ。

それを蜂飼さんの文章がさらに噛み砕き、且つ、焦点を絞ってくれている。だから、あっちこっちいろんな絵を味わっていても、一貫したストーリー感を持続させることができる。手腕!

人間の言葉と、動物の言葉と。分け隔てない感じ。ノーマライゼーション。のびのびとした動物たちのおしゃべりに、ほっこりする。そこに無いのは、檻や柵だけではない。支配や統率のない、理想の世界が、そこにある。

 

そして巻末には、絵探しがたっぷりあるのよね~ん!最後の1問までページをめくりまくりながら息子氏は楽しんでおりました。エピソードがいっぱい隠れてるのが、いいんだよねぇ。

 

一人で、少人数で、じっくり読みたい眺めたい浸りたい。何回でも楽しめる1冊だと思います。

息子が選んだ本だったのだけれど、センスあるな!へへ。

 

『ちょっぴりおかしなどうぶつえん』 2017年

発行所 徳間書店

アリソン・ジェイ 作・絵 蜂飼 耳 文 

 

 

ねずみくんはめいたんてい

『ねずみくんはめいたんてい』 作・なかえよしを 絵・上野紀子 

 

『ねずみくんのチョッキ』はこちら☟

bg8qp.hatenablog.jp

 

図書館の“新しい絵本”の本棚に、ねずみくんシリーズを発見!

しかも、ちゃんと上野紀子さんの絵。

2019年に亡くなってしまった上野紀子さん。遺作があったのかしら…と思ったら!!

 

「作家のなかえよしを氏が、今までのねずみくんの絵本の中からお話にあった絵を選び、パソコンで組み合わせたり合成したりして、新しく作りだした作品です。」(抜粋)

 

ですって!!!

 

ふおぉぉ~~!

 

すごい!なかえよしをさん!!

 

お二人の暮らしがどんなだったかなんて、私には分からないことだけれど…配偶者を亡くすって、どんなに、どんなに辛いことだろう。しかも、(おそらく)最大のビジネスパートナー。

 

そこから、立ち上がって、作品を生み出す。

 

ブラボーです。

 

息子に読み聞かせるとき、“絵・上野紀子”って読むときに、なんだかぐっときちゃったよ。

 

この世にいなくなってからも、生きる、って、すごいことだよなぁ。

 

すごいよなぁ。

 

 

木に生っていた、1個のりんご。

次の日ねずみくんが木を見に行くと、りんごが無くなっていた!!!事件!!!

ねずみくんは、りんごを食べたと思われる犯人を問い詰めていくのだけれど…

 

ああ、素敵。

 

最後のユーモアもね!

 

優しい、世界だ。

 

なかえよしをさんの、ねずみくんと、その他キャラクターたちへの愛を、上野紀子さんへの愛を、感じる1冊でした。素敵だな。

 

 

 

そうそう、奥付を見ましたら、2020年現在、やはり、お住まいの記載はございませんでした!そりゃそーだ!笑

(詳しくは、『ねずみくんのチョッキ』の記事参照)

 

『ねずみくんはめいたんてい』 2020年

発行所 ポプラ社

作・なかえよしを 絵・上野紀子

 

 

なつのおと みつけた

『なつのおと みつけた』 さく・え/みやじまみほこ ぶん/たにいくお

 

セミの鳴き声、入道雲に飛び込んでいく飛行機、シュワシュワの瓶ラムネ、夏の空…

夏の日常にある、たくさんの「音」たちが、切り取られ、つながっている。

 

これは、読み聞かせ、というよりは、眺めて、広げて、感じて、味わう絵本かもしれない。

一人で、しーんと、味わってもいい。

親子で、いろんな話をしながら、深めていってもいい。私も、息子といろんな話をしながら読みました。すいか割り、したことなかったね。一緒に、やってみたいね。

 

空、雲、海、砂浜、雨、ガラス瓶。

夏の風景には、水彩絵の具がよく似合うなぁと、まじまじと見てしまいます。

 

夏ってさ、なんだか独特のにおい、独特のアンニュイさがあるよね。そう、アンニュイ。そんな感じ。

 

 

 

流れ星のページで、星の軌跡をなぞりながら、ここにお友達がたくさんいるよ、どらやきも乗ってる、と言うボク。

 

…七夕、ひきずってますね。

 

『なつのおと みつけた』 2020年

発行所 みらいパブリッシング

さく・え みやじまみほこ ぶん・たにいくお

 

 

おにぎりをつくる

『おにぎりをつくる』 文・高山なおみ 写真・長野陽一 

 

表紙には大小2つのおにぎり。おいしそ~!

 

ひらがなとカタカナで書かれた易しい文章。

くっきりと、でも、温かみのある写真。

大人の手、子どもの手。

時々出てくる、かわいいイラスト。

 

お米を研ぐところから、おにぎりができるまで。

余計な具がないところが、また、いい。

あくまでもシンプルな塩むすび

 

おしゃれ!素敵な本!!!

 

我が家でも、息子とおにぎりを作ってみたよ~!

f:id:bg8qp:20200711152125j:plain

 

残りご飯を使ったので、お米を研いで炊くところは省略。 

f:id:bg8qp:20200711152100j:plain

 にぎにぎ…

 

f:id:bg8qp:20200711152030j:plain

 でけた!!!!!

 

f:id:bg8qp:20200711152042j:plain

のりとお味噌。ダッフィー様もヨダレじゅるり。 

 

私も子どもの頃、お母さんとお茶碗にご飯を入れてコロコロおにぎりを作ったっけな!

昔使っていた、角の丸い、実家のダイニングテーブルを思い出した。

 

 

裏表紙には、

 

“子どもたちが、

自分ひとりでも

できるようにと思って、

この絵本をつくりました。

 

おかあさんもおとうさんも

外で働いていて、

家にだれもいないとき。

はらぺこのおなかには、

おにぎりは「いのち玉」です。”(以下略)

 

とある。

 

 

先日も、胸が張り裂けそうなニュースがあった。

信じられないことだけど、そういう現実は、ある、のだ、と、ぐじゃぐじゃに思う。

ひとりぼっちで、お腹を空かせて、さぞ辛かったろうな。悲しかったろうな。

 

 

千と千尋の神隠しで、ハクがくれたおにぎり。

観ているだけで口の中に広がる、涙でしょっぱいおにぎりの味。

 

震災で家に帰れなかったとき、お義母さん(当時は結婚してなかったが)が作ってくれた、でっかいおにぎりの味。

 

「いのち玉」とは、よく言ったものだと思う。

 

もちろんこの本に、そんな説教臭い意図は無いのだろうけれど、

 

おにぎりには、やっぱり、そういう力があるものなのかもしれない、と思ってしまう。

 

『おにぎりをつくる』 2020年

発行所 ブロンズ新社

文 高山なおみ 写真 長野陽一

 

 

わにわにのおおけが

『わにわにのおおけが』 小風 さち ぶん 山口 マオ え 

 

わにわに!

 

『わにわにのおふろ』はこちら☟

bg8qp.hatenablog.jp

 

『わにわにのおでかけ』はこちら☟

bg8qp.hatenablog.jp

 

表紙におはしますは、薬箱を持ったわにわに。

扉絵は包帯にピンセット、そしてキップパイロールではないか!ああ!キップパイロール、と文字を打ち込むだけであの軟膏の何とも言えない匂いがしてくる。いい匂い。あたくし、あの匂い、好きなのよ。

 

ある日、家の廊下を“ずり づづ”と歩いていたわにわには、机にあった紙、ハサミ、のりを使って工作を始めます。

「きって おって はって

 おって きって はって」

きっ…!!!

わにわには、ハサミで手を切ってしまうのです。。。さぁ、どうなる、わにわに…!

 

いやあああああ、わにわにのゴツゴツした緑の皮膚に、赤い鮮血が痛々しい。ほんとに痛そう。本当に、山口マオさん、すごいね。ぎゅおおおおおお…

 

でもね、やっぱり、ほんとに、わにわには、かわいい。

 

なんでしょう、表情や体の動き一つ一つに、焦りが、憂いが、喜びが溢れている。

 

それはそれは人間味溢れるお方なんです。わにだけど。

 

わにわに、だいすっき!

 

息子のお気に入りは、「わにのり」。

 

『わにわにのおおけが』 2010年(こどものとも年少版発行は2006年)

発行所 福音館書店

小風さち 文/ 山口マオ 絵

 

 

よかったねネッドくん FORTUNATELY

『よかったねネッドくん FORTUNATELY』シャーリップ さく やぎた よしこ やく

 

ヴィヴィットな、スカイブルーに包まれた表紙!パラシュートを着けて手を広げているのが、主人公のネッドくん。

 

 

ある日、パーティーの招待状をもらったネッドくん。よかったね!

でも、大変!それは遠い遠い場所で行われるパーティーだった…。

でも!友達が飛行機を貸してくれて飛んでいけたよ!よかったね!

でも、大変!飛行機は途中で爆発…。

でも!パラシュートがあったから大丈夫!よかったね!

でも、大変!…パラシュートには穴が開いていて…。

でも!!!

 

 

ふごぉぉぉぉぉ!!!!!

…とにかく、「よかったね!」と「でも、たいへん!」の無限ループ!こんなことってあるぅ!?な、大変忙しい展開。それが、面白い。

息子も、2回目からは次の展開を覚えてて、「次は○○になるんだよね」とか言いながらニヤニヤしていた。

 

読んだのは、日本語と英語で書かれた、二か国語版に生まれ変わったバージョンだったのですが、英文だと「Fortunately」と「But unfortunately」が繰り返し使われていて、こっちの方がなんかリズムがいいね。

 

よかったね、のページがすごくカラフルな色遣いなのに対して、でも、たいへん!は、超グレーカラー。ガーン!藤木君と永沢君みたいな。

 

話は変わりますけども、”fortunately”とか”unfortunately”みたいな単語って、なんかいいよね。感情や結果を後出ししない英語のスピリット!

あと、”suddenly”とか”actually”とか。好き。…伝わる?笑

 

 

大型絵本も出ている!結構有名な本なのね!

絵が分かりやすいので、英語の読み聞かせ本として、ぜひオススメしたい!

 

 

『よかったねネッドくん〔英文つき〕』 1969年

発行所/偕成社

作者/レミー・シャーリップ

訳者/八木田 宜子

 

 

みんなのおねがい

『みんなのおねがい』 すとうあさえ ぶん おおいじゅんこ え

 

あっという間に七夕ですね。天の川…見られるかな?今夜も雨かな。

 

お母さんと七夕飾りを作ることにした、うさぎのうーちゃん。
お友達のねずみのちゅーくん、くまのまっくん、かえるのけろろちゃんにも、お願い事を聞いて、みんなでお願いを笹に吊るすことに。さて、うーちゃんのお願いとは…

 

とっても穏やかで優しい、易しいストーリーですが、七夕の由縁や楽しみ方がなんとなく散りばめられていたり、ページのおしまいには、大人向けに七夕の伝説や文化について、書かれていたり。

「はじめての行事えほん」というシリーズで、他にもいろんな行事や季節の催しが取り上げられているようです。他の本も見てみたいな!内容は、幼児にぴったり。小学生に読むなら、ぜひ後ろのあとがきも噛み砕きながら一緒に伝えたいところ。こういうシリーズ、いいねぇ…!


さて、何か勘違いしている我が息子は、

「ぼく、ようちえんでたなばたのとき“どらやきがもらえますように”ってかいたの。だから、こんど、ようちえんでどらやきもらえるよ!」

だそうです。
貰えないと思うよ、と言っても、

「もらえるよ!!!(半ギレ)
〇〇せんせい(担任の先生)が、おそらのおほしさまにきこえてたよっていってたもん!!!」

…クリスマスじゃないんだぜ。いや、クリスマスだって幼稚園でプレゼントは貰わないか!!

 

 

神様、織姫様、彦星様、
どうか、平和な毎日が続いていきますように。
みんなが元気で、当たり前の穏やかな日々を送ることができますように。


『みんなのおねがい』 2019年
発行所:ほるぷ出版
ぶん:すとうあさえ
え:おおいじゅんこ

 

 

悪い本

『悪い本』 宮部みゆき 作 吉田尚令 絵 東 雅夫 編 

 

タイトルに吸い寄せられて、手に、取る。

 

なんだか、不気味な、本。

 

パラパラとめくっていくと…

 

うおぉぉぉぉぉ…

 

これは…怖い本です…!ホラーーー!!!

 

 

 

だって、作者は、宮部みゆきさん。ほのぼのした絵本、なわけがない。笑

 

絵もね、それはそれは、怖いよ。吉田尚令さん。美しいの。夢に出てくるよ。

 

よくよく見たら、「怪談えほん」と書いてある。シリーズになっていて、著名な作家さんがお話を書いているのね。京極夏彦さんとか。東雅夫さんという方が、編んでいる。

 

超怖いから、読み聞かせには、時と場と相手を選ぶ本かも。笑

 

 

 

でもさ、なんでだろう、怖い話って、魅力的なんだよね。

 

子どもの頃も、怖い話、大好きだったな…でも、本を手に取るのも怖いの。でも、読むの。笑

 

今は、怖い話がとっても苦手になってしまったのでなるべく避けるようにしている(レンタルDVDのホラージャンルの棚すら近寄りたくない)のですが、やっぱり、特別な魅力があるのだとは、思う。

 

未知のもの、触れられないもの、触れちゃいけないもの。

 

 

 

ちなみに夫(この人も怖い話がとても苦手)は、この本を大絶賛していて、絵本の『地獄』に近いものを感じる、と、面白い、と、喜んでおりました。

 

確かに、誰の心の中にでもあるもの、誰でも落ちうるもの。ダークサイドからの手紙、とでも申しましょうか。

 

 

 

あああ、美しい。あああ、朗読してみたい。

 

 

『悪い本』 2011年

発行所 株式会社岩崎書店

作 宮部みゆき  

絵 吉田尚令  

編 東 雅夫