『オトシブミのふむふむくん』 おのりえん 文 秋山 あゆ子 絵
こどものとも2月号。
手紙を書くのが大好きなオトシブミのふむふむくん。
ある日、お花見大会に葉っぱの葉書を持ち込んで、満開の桜を眺めながらお手紙を書きました。
「あてさきは……てがみの すきな だれかさま。」(本文より)
すると、何日かしてお返事がやってきて…
お返事の主は、手紙の好きなオトシブミのふみふみちゃん。
二人の手紙のやり取りを通して、1年が巡っていく。
ああ。とっても、上質で、優しくて、楽しくて。
いい絵本だなぁ。
このお話の舞台は、虫の世界。
虫たちがお花見もするし、学校にも行くし、遊園地で遊んだりもする。
私は虫が苦手なので、結構リアルな絵があるとヒィィっとなってしまうんだけど、それでも、まじまじと見入ってしまうような絵の美しさ、細やかさ、面白さ。
実は虫があまり得意じゃない長男(!)も、やっぱりお話と絵の面白さに惹き込まれて、気付けばじっくりと眺めているのでした。
長男のお気に入りは、お正月の凧揚げのページ。
私のお気に入りは、ムシムシショッピングプラザのページ。
凧揚げの糸が迷路みたいになっていて、指でなぞって遊べる。
ムシムシショッピングプラザには古本しみしみ堂というのがあって、子どもの頃、紙魚(しみ)という本を食べる虫の役をしたお芝居を思い出した。やっほー、紙魚。久々の再会だね。そういや、その前の年はみの虫の役をやったな。ムシムシショッピングプラザには、モードみのむしというオシャレなブティックもあるのだ。なんということでしょう。
先日、ついに絵本原画の世界2022に行ってきました!一緒にどう?と誘ってくれた友達がいたんだけど、ワンオペの自信が無くお断りしてしまって…ゴメンヨ…(:_;)
赤子は旦那に背負ってもらい、幼児は私と手をつなぎ、家族で観てきました。
その友達もどうか、観られていたらいいな
でっかくて、しーんとした、県美、の雰囲気。
やっぱり、そこに、そのまま、あってほしいなぁと、年季の入った愛おしい空気を胸いっぱいに吸い込んできました。
感想は……圧巻…!
絵本の原画というのは、印刷されることが前提で、その後の保存については考えられていないものも多いのだそう。
でも、絵本の原画の芸術性に目を付け、宮城県美術館では、たくさんの絵本の原画を収集・保存してきたのだそうです。
いろんな技法、いろんな手法、あまりにもバラエティに富んだ作品たちが、絵本、という世界で繋がっている。
絵が歌曲なら、絵本はオペラだと思う。あ、うまいこと言っちゃったかも。なんて。
ストーリーが付くからこその、連続しているからこその、作品の世界。芸術性。面白いです。
子どもが展示を楽しめる「こどもセルフガイド」というのがあって、作品の特徴に気付かせながら、飽きずに鑑賞できる工夫がされていて、息子が喜んでいたのも嬉しかった!
あ、缶バッジのガチャガチャもしました
大人は本も一筆箋も買っちゃったよ。チャキーン!(写真なし)
いろんな絵をじっくりと眺めてみて、改めて、私は、丁寧な絵が好きなのかもなぁ、と思う。動物のふわふわとした毛並み、躍動感のある形。命あるもののエネルギーみたいなものが、ちゃんと、美しさの中に閉じ込められているもの。
記録していたお話の原画も、いくつか見つけました。きゅん!
『ぐりとぐら』の原画は、長男が4か月の時も観たから、つい絵たちに「お久しぶりね!」と声をかけたくなるような気持ちになりました。
コレクションの中核は、他でもなく、「こどものとも」の原画たち。
「こどものとも」が、いかに素晴らしい試みに挑戦し続けてきたか。
『オトシブミのふむふむくん』は、間違いなく、そのスピリットを受け継いだ、上質な1冊だと思います。
虫が好きなお子さんがいたら、ぜひプレゼントしたいお話。素敵でした!
月刊予約絵本「こどものとも」
『オトシブミのふむふむくん』 2022年2月号(通巻791号)
発行所 福音館書店
おのりえん 文
秋山 あゆ子 絵