『ねずみのおいしゃさま』 なかがわ まさふみ さく やまわき ゆりこ え
3月ですね。仙台も日に日に春めいてきています。
目とか鼻にも春が来てますね、アレね、ムズムズゴニョゴニョ…いや、でもね、無視、無視、無視…したいんですけど、どんどん存在感増してきてるね!嫌ね!年々、症状が増してる気がします。おとなしく点鼻からはじめよう。目薬も新調しちゃったよ。
さて、原画展で観た絵本が読みたい!と思い、『ねずみのおいしゃさま』を読んでみました。
表紙には、5匹のひよこさんにお話をしている、ねずみのおいしゃさま。表紙をめくれば、なんだか5匹に手を焼いてる?ねずみのおいしゃさまの顔がなんともチャーミングです。
冬の夜、ねずみのおいしゃさまが寝ていると、夜中にりすさんの家から電話がかかってきました。坊やが風邪をひいて熱を出しているので早く来てほしい、とのこと。
大雪の夜に出かけるのを心配している奥さんに、
「ゆきぐらい なんでもないさ。よなかに でかけるのも、いしゃの しごとだよ」(本文より)
と言って、おいしゃさまはスクーターにとび乗って、りすさんの坊やの元へ向かうのですが…
いやいや、まじか。いやいや!
なんていうか!もう!ねずみのおいしゃさまったら、なんて人間臭いお人なのでしょう。(ねずみだけど)
大雪の夜中に起き出して往診に行くなんて、なんて心の優しい、正義感のあるおいしゃさまなのだろう、さぞかし、りすの坊やはおいしゃさまにすっかり楽にしてもらって、感謝感謝、なんだろうな…なーんて勝手に物語の先を想像してはいけません。
これは、人間臭すぎるおいしゃさま(ねずみだけど)のチャーミングさを味わう物語。だ!
長男も「えー!」と言いながら、ニヤニヤ読み進めていました。オチまで気に入って、読んだ次の日の朝、幼稚園へ向かう車の中でもあらすじを思い出して笑いながらストーリーテーリングしてくれました。ははは!
展示の解説にもあったような気がするのだけれど、山脇百合子さんの絵の素敵さは、登場人物の暮らしが見える背景にあると思う。
この絵本の最後のページだけを見ても、いきいきとした植物たち、すぐに水やりできるジョウロ、整頓された薬棚、マットに載せたスリッパ、飾らない水差しとコップ、飴、鉛筆、メモ、けん玉…おいしゃさまや奥様の温かで丁寧な暮らしが、手に取るように分かる。今すぐお家にあがって、お邪魔しま~す、と言ってしまいたくなるような、心地よさ。暮らしの温かさ。実家感。
あぁ、いいなぁ。
そして、図らずも、最後のオチが春の訪れにぴったりな1冊なのでした。
学年末の隙間時間に、春休みの親子時間にも、ぜひ!
『ねずみのおいしゃさま』 1974年
発行所 福音館書店
中川正文 さく
山脇百合子 え