『あめのひの ぼうけん』 森 洋子 作
もう6月も終わってしまうけれど「こどものとも」6月号です。
セピア色の表紙に、女の子の赤いお洋服が映える。
舞台は、昔からあるような木造平屋のお家。主人公は、あっちゃん。時々顔を出す、ねこのミー。
雨が続いて外遊びができないあっちゃんは、積み木にも折り紙にも飽きてしまって、ふと呟く。
「ああ、つまらない。どこかに いきたいなあ」(本文より)
あっちゃんは椅子、座布団、目覚まし時計、扇風機、傘、お鍋、お玉…いろんなものを集めてきてヘリコプターを作り始める。
お鍋はヘルメットに、目覚まし時計はヘリコプターのメーターに。ハンガーの操縦桿とお玉のレバーを操れば、気分はもう、パイロット。
あっちゃんは、夢のヘリコプターに乗ってお家中を巡り、不思議な世界へ旅立つのです…!
この本をパラパラっと最初に見たとき、もしかしたら長男は怖がるかもしれないな…と思いました。不思議の国のアリスの如き、あっちゃんインワンダーランド。全体的に薄暗い色彩で描かれているし、天井の板の模様がお顔に見えたり歯ブラシが釣りしてたり…怖がりの長男氏、大丈夫かなぁ…と思って読み始めてみたら…
さすが男子!ヘリコプターで冒険、というテーマがビビビッと来たみたい。そして、お家の中のいろんなものが変身しているのがまた、面白かった模様。あ、これはポットだ、とか、自転車だ、とか、サッカーボールだ、とか、一緒に探しながら読みました。
最後のページにはお家の見取り図的なものも載っていて、「ここがスタートで、次がここ…これが遊園地のお部屋…」と指でなぞりながら旅路を振り返る長男。
…気付けば最近のリピート率ナンバーワン絵本になっていました。大人の思い込み、ヨクナイネ!
この本を読み始めたのが、次男が産まれたばかりでまだママと赤ちゃんだけ1階のリビングで寝ていた時期。長男にとっては、ママと二人きりで冒険は気分を味わえるのも嬉しかったのかもしれないなぁ。その頃は『あめのひのぼうけん』と、『だいすき ぎゅっ ぎゅっ』ばっかり読んでいた。それもまた、思い出になっていくのね。
先ほど「怖がるかも」と書いたけれど、なんとも本当に特別な雰囲気のある絵本。
畳、襖、竹でできた柵。足踏みミシン、レトロなおもちゃ…その匂いやじめっとした空気までもが伝わってくるみたい。
絵の細かい描写がすごく丁寧で、素敵で、見れば見るほど世界にのめり込んでしまう。
大人もノスタルジーに浸りながら、キュンキュンして読める一冊だと思います。
森洋子さん…他の本も読んでみたくなります。
さて、先日この本を読んでいたとき、鏡台のシーンで三面鏡の合わせ鏡にたくさんあっちゃんが映っているのを見て、家でも実験。
鏡の角度を変えながら映り込む自分を嬉しそうに眺めてニヤリとしながら、
「これが本物のぼく、これがにせもの、これがにせもの、これがにせもの…」
と指をさしていく長男…
…鏡の虜になる姿、なんか怖い!
おかげさまでブームは過ぎ去りました。ヨカッタ!笑
月刊予約絵本「こどものとも」
『あめのひの ぼうけん』 2021年6月号(通巻783号)
発行所 福音館書店
森 洋子 作