『かくしたのだあれ』 五味太郎さく
表紙には、わに、かに、にわとり、かまきり、あとは…これ、たぬき?レッサーパンダ??
裏表紙には、きりん、さめ、かめ、くちばしの長い鳥。
1977年に発行されたこの絵本、奥付を見るとサブタイトルに≪どうぶつあれあれえほん≫と、ある。
あれあれ、というのは、どの辺が「あれあれ」なのだろうか。「あれあれ、何かおかしいぞ」のあれあれなのか。そもそもどうぶつあれあれえほん、というシリーズがあるのか。はたまたこの本そのものがどうぶつあれあれえほん、なのか…
それにしては表紙における“どうぶつあれあれえほん”の表記があまりにもひっそりと、消極的なんだよなあ。
それでも、絵本の情報を調べると漏れなく≪どうぶつあれあれえほん≫と、サブタイトルが付いてくるんだよなあ。
あれあれ、あれあれ…
さて、ページを開けば向かい合った二羽のにわとり。
「てぶくろ かくしたの だあれ」(本文より)
にわとりの一羽は立派なとさかを持っている。
もう一羽は…あれあれ、かわいいピンクの手袋のとさか。
『手袋はどこ?』『この動物は、なあに?』…ほほぅ、こんな風に探しながら、遊びながら、会話しながら読んでいくのか。
次のページには、わに。…あれあれ、一匹だけ、歯が歯ブラシになってるわにがいるぞ??
『歯ブラシはどこ?』「見つけた~!」『わにの歯が歯ブラシだったらどうする?』「えー!」
…息子氏いわく5歳児には「これ見つけるのかんたん!」なんだそうな。
次のページも、あれあれ、靴下が…!
…お気付きだろうか。
私ったら、読みながら“あれあれ”って言っちゃってるんだわ。言うわ。言ってるわ。これ、言っちゃうわ。
あれ?でもなく、おやおや?でもなく、あれあれ、と言わずにはいられないこの感じ。うーん、やっぱり、これは、「どうぶつあれあれえほん」なのだ。誰が何といおうと、「どうぶつあれあれえほん」なんだ…!
さて、息子と読みながら気付いたのだけれど、この絵本、私も子どもの頃、読んだことがあるような気がするんだよなぁ…もちろん全部は覚えていないのだけれど、わにの歯とか、スプーンとフォークのおさげの絵を見ると、わぁ…って、脳みその裏側にこびりついていた懐かしさがじわぁ~~っと沁みだしてくるような感じ。幼き日の、温かで、どこか、切ないような、記憶。五味太郎さ~ん。
これまでに息子と一緒に絵本を読んできた時間も、彼にとっては人生のほんの一瞬でしかないけれど…彼の脳みその裏の奥の奥の奥にでも、何か、小さく、残っていてくれていたらいいな。
そしていつか、ふとしたときによみがえって、彼を助けてくれたり、励ましてくれたり、笑わせてくれたりしたらいいなぁ、と、思うのです。
『かくしたのだあれ』 1977年
発行所 文化出版局
五味太郎 さく