『おなじ月をみて』 ジミー・リャオ 作 天野健太郎 訳
作者は台湾の絵本作家、ジミー・リャオさん。
主人公のハンハンは、いつも窓の外を見て待っている。水色の台に乗って。
ハンハンのお家には、いろんな動物がやって来る。
ライオン、ゾウ、ツル…
みんなどこかケガをしていて、ハンハンは優しく手当てをしてあげる。そして一緒に同じ月を眺める。
そして、ある時、待ちに待っていた人が帰ってきた…!
動物が来るたび、月が満ちていく。
月が円くなる頃、やって来たのは、戦地から帰ってきたパパ。
あたたかく、平和で満ち足りているように見えるハンハンの家と、迷彩柄の軍服を着たパパのコントラスト。月のスポットライトを浴びて、これ以上無いくらい力強く抱きしめ合うハンハンとパパとママ。ハンハンとママの安堵の顔。
感動と安心と同じくらい、ショッキングなシーンでした。
そうか。
パパは戦争へ行っていたのか。
ハンハンはずっと、パパを想って月を眺め続けていたのか。
表紙と裏表紙をめくると、まだ100までしか数えられないのかなぁ、ハンハンの拙い文字で、1、2、3…100まで行ったらまた、1、2、3…数字が延々と描かれている。パパに会える日を数えていたのかなぁ。
帰ってきたパパは、大きな大きな、大きなケガをしていた。ハンハンは、動物たちにしたのと同じように、優しく手当てをしてあげる。
今、現時点では、全世界が全ての国が戦争をしている状況ではない。コロナの危険性という意味では、今はどこも非常事態ではあるけれど…。
ある場所では、安全な、幸せな暮らしをしている人がいて、ある場所では、命を危険にさらして、必死に生き抜いている人がいる。
月をテーマに借りてみた本だったけれど、平和を、家族が一緒にいられる尊さを、ビシバシと感じて、ぐわっと胸がつかまれるようでした。
地球のどこからでも、見えるのは、同じ月。
奪い合わなくったって見える、空の月。
私も、あなたも、みんな同じ月を見て、同じように想いを巡らせているんじゃないのかなぁ。
同じ月を見ている仲間同士が、どうして争わなきゃいけないのかなぁ。
それぞれが、それぞれに、それぞれを尊重し合える世界って、難しいのかなぁ。
それでも、信じていたいよなぁ。
『おなじ月をみて』 2018年
発行所 ブロンズ新社
作 ジミー・リャオ 訳 天野健太郎