『はじめてのことば① だいじ』 さかざき ちはる
息子を生んだのは、27歳の時。27歳というと、周りは結婚ラッシュ&ベビーラッシュのはじまり、というような感じで、友達にも先輩ママがちらほら、という状況だった。
結婚2年目の妊娠。我が子が生まれることがすごく嬉しかったし、生まれてからのことなんて想像もできなくて(現実とはかけ離れた穏やかな素敵な妄想だけはできたけど笑)、独身時代から変わらない気ままな生活を送っていた私。産休に入り、赤ちゃん連れの友達と遊ぶようになった。
そこで、衝撃を受ける。
アレ、私、どうやって赤ちゃんを育てたらいいんだろう…!!!
赤ちゃんへの接し方が、よくわからない。オムツ替えやおっぱいをあげる方法が分からないのは当然として、どう関わって、どう声をかけたらいいのか。
私は末っ子で赤ちゃんのお世話なんてほとんどしたことが無かった。
そうだ、やばい、私、超やばい。お腹はもう、こんなにポンポコリンなのに。
小学校教諭になったばかりの時も、子どもの世界に大人として入っていくことの難しさにいっぱい悩んだけれど、今度は、我が子だ。私が育てなきゃいけないんだ、私がちゃんとしてなくちゃいけないんだ…
今思えば、周りの人にいくらでも助けてもらえたし、そもそもみんな初めてなんだし、ほんっっっとに、ど~~にでもなることだけれど、その時は「ワタシ、やばいかも…!」と思ってしまったのでした。
その後息子は無事に生まれたのだけれど、直母でおっぱいを飲むことができず、どんどん体重が落ちていく…今の超ハイパーウルトラ元気ボーイの姿なんて想像できるわけもなく、ひたすら寝てるし、あんまり泣かないし、死んじゃうんじゃないか、って思ってひたすら搾乳して、ミルクを足して、夜中も私の方が先に起きちゃって寝てる息子におっぱいあげてみるけどやっぱり飲まなくて…
寝てばっかりであんまり泣かない赤ちゃんなんて、今思うと神様かなって思うんだけど、当時はそんな余裕は無かったのね…
退院することがすごく不安で、オトナなのにめっちゃ泣いたのを覚えています。
さて、そんな新米お母ちゃんだった私ですが、息子が少し大きくなってくると、友達が続々と顔を見に遊びに来てくれました。それこそ産休中、育休中の友達も多くて、私も身動き取りやすかったんだよなぁ!楽しかったなぁ。
私と夫は同じ大学で、共通の友人が多い。夫はあんな顔して幼児教育が専門だったので、共通の友人にも保育士になった子が何人もいた。
そんな保育士の友人たちが遊びに来てくれた時のこと。
当時2歳だった友達の息子くんも一緒に遊びに来てくれたんだけど、もちろんまだまだ小さいから、おもちゃで元気に遊んだり、悪気無く物を投げたりすることもある。
そんな時に、友達が声をかけていた言葉が、
「だいじ、だいじ。」
ダメ!でもなければ、乱暴にしないで!でもない。あのね、あなた、おもちゃを投げるのは良くないことなのよ、的な無駄に長い説得でもない。
これは大事なんだよ、大事にするものなんだよ。
柔らかく受け止めながら、諭し、正す、言葉。
うおぉぉ…“だいじ”って、いい言葉だなぁ。
と思ったのでした。
あと、「やさしく」も、いっぱい言ってて、イイ!って思った…!
教育の世界では、否定ではなく、肯定で指示を出す、というのはよく言われることだけれど、
例:走りません×→歩きます○
小さい子どもたちへの声がけにも生かしていきたい。
ダメ!じゃなくて、大事にしてね、やさしくしてね。
いや、ダメ、も、もちろん時と場合によって絶対使うけども。ガッツリ使うけども。笑
はい!前置き長―――――い!笑
そんなわけで、保育の世界ではよく使うのかもしれないキーワード!
「だいじ」!
育児に、使っていきたい。子どもたちに、伝えていきたい。
絵本のタイトルになっていたので、つい手に取ってしまいました。
絵本には、だいじなもの、がたくさん出て来る。
わたしの大事なもの。誰かの大事なもの。
くまちゃん、お花、お魚…そして、あなた。
あぁ、いい絵本だなぁ。
私も、あなたも、大事だよ。みんなを、尊重できる気持ち。
自信まるで無しの新米クソ母ちゃんだったけれど、今なら、赤ちゃんも幼児も超ウェルカム。どーんと構えて向き合える自分がいる。私も、まだまだ、日々、成長できるんだな。まだまだ、これからだけどもな。
「だいじ」は、私の育児を助けてくれた魔法の言葉なんです。
ありがとう!
…その友達にはまだ直接言えずにいるんだけどもね。笑
『はじめてのことば① だいじ』 2015年
発行所 WAVE出版
著者 さかざきちはる