『ようちえん いやや』 長谷川義史
我が家の年中男児は、喜んで幼稚園に行く。
今は夏休み。
「○○先生(担任の先生)に会えないの、ぼく、さみしい…」
な~んて唇を尖らせハの字眉にして言っちゃったりする。○○センセ!喜んでくださいっ!!!
お休みの間の預かり施設も、毎日元気に通ってくれて、本当に、本当にありがたい。
でも、今はこんなにも落ち着いている息子ですが、登園をものすご~~く嫌がった日が、何度も、何度も、あったのでした…
絵本の表紙は、黄色い園帽子と肩掛けカバン姿の泣いてる男の子。
表紙を開けば、ページいっぱいの子どもたちがみ~~んな、泣いている。
たけしくんも、まなちゃんも、つばさくんも、…あんな理由、こんな理由。
とにかく、「ようちえん いくの いややー」!!!!
…なんかね、読んでて胸がキュキュキューっと締め付けられてきちゃうのよね。身に覚えがありまくりすぎる。
まぁ、さ、なんちゅーか、幼稚園は文科省管轄の教育の場ですから、教育を受けさせる義務、を果たすべく、迷わずドーンと背中を押せば良いわけです。とは言っても、やっぱり泣いてる我が子を置いていくのは心苦しくもある。ましてや、幼稚園の前後の預かりをお願いしている身としては、親の仕事の都合で幼稚園の時間以上に離れ離れの時間が長く続くのは、やっぱり申し訳ないような気持ちになってしまう。
転職する前は、朝7時~夜7時まで離れ離れだったからね…もちろん、自分がやりたくてやっていたことだし、自分が働くことは社会への貢献だとも思っていたし、日々を必死で駆け抜ける自分の背中から息子がいつか何か少しでも感じ取ってくれるものがあれば…みたいな気持ちもあった、と思う。でも、いろんな人に頭を下げて、どんなに必死で頑張っても、いろんなことが全部中途半端な気がしてしまって…私は苦しかったなぁ…特に、育休からの復帰直後。
「お宅のお坊ちゃんは大丈夫ですか?」
今思い出しても胸に突き刺さる。
息子、保育園に入って、グレたんです。笑
今は元気有り余りボーイですが、1歳当時は、わりと穏やかなタイプだったボク。
それが、私の復帰と同時に保育園に入り、いきなり11時間保育…
情緒不安定MAX。泣いて泣いて怒って怒って…
ヨーグルトぶん投げたり(天井にまだシミが残っているよっ!)、ずっと泣き止まなくて夜中にバーバにお散歩に連れてってもらったり…
なんか私も日々パニックだったから、詳しいことなんか本当に全っっ然覚えてないんだけど、とにかく、息子氏、グレにグレまくってた毎日でした。
それだけでもう頭の中いっぱいいっぱいなのに、先輩のオバチャン先生からひとこと。
「子どもの問題って、結局は家庭環境ですよね。ゆう先生も朝早くから夜遅くまで…お宅のお坊ちゃんは大丈夫ですか?」
ダイジョウブデスカ
大丈夫じゃないよ…あああ…
はい。恐怖でした。
今なら、「何それ~~!○○先生ひどいっ!」とか、「わーー本当、うちの息子やばいんすよぉ~~…!」とか、何でも適当に返せるけどさ…
辛かった。嫌だったな。私は、ちゃんと言葉を発するとき、心を配れているだろうか。
ちなみに、家庭環境は重要ですが、そういう問題ではないことも多々あります。
でもさ…やっぱり、ママも、生んでもらった、育ててもらった一人の人間として、借りれる助けは何でも借りて、ちゃんと、やれること、やりたいことをやるべきだと思う。それが、自分の願いなのか、自分を犠牲にしてでも誰かを幸せにする術なのか、それは人それぞれだと思うけれど…そして、いつか、ちゃんと助けてもらったことを、返していく。助けてあげられる大人になる。私も、そうありたい。
自分の働きが、少しでも誰かの力になったらいい。別に、お給料をいただく仕事だけじゃなくてね。日々の暮らしが、想いが、小さな一歩が。
私でいえば、学校や発達支援の現場でふれあってきた子どもたちが、我が子が、いつか誰かのために役立ってくれたら、すごいことだよなぁと思う。うまくいったことも、そうでないことも、何かの糧になったらいい。私には到底できないことを、縁の下から繋いでいける、尊さ。
身勝手かな。そうかもしれない。でも、今は、そう思っている。
まぁ、でも、子どもはさ、そんなん知ったこっちゃないよね。お家にいたいときもあるよね。お家の人と、ずっと一緒にいたいよね。
でもさ、お友達や先生から学べることもいっぱい、いっぱい、あるんだぜ。強く、優しく、なれるんだぜ。
だから、今日も、うんとこ勇気を出して、頑張って揉まれておいで。楽しんでおいで。そして、帰ってきたら、またラブラブしよう!!
ギューってして、いってらっしゃい!楽しんでね!って背中を押せる毎日を。
頑張れ、キッズたち!頑張れ、お父さん、お母さん、家族たち!
…頑張りすぎている人は、いったん休憩して、エネルギー貯めてからだよ~っ!!!
『ようちえん いやや』 2012年
発行所 株式会社童心社
長谷川義史 作・絵