『くだもの』 平山和子さく
表紙には、プリプリのさくらんぼ。
ページを開けば、まんまるすいか、次のページは今にもすくって食べたくなっちゃう、半月形にカットされたすいか。
もも、ぶどう、なし…いろんなくだものが、まるまるのまんまと、食べやすく切られた状態とで描かれていく。
洗ったばかりの水の滴、包丁で剥いたすじ、つやつやの、もこもこの、しっとりの、みずみずしい、果物の表情たち。
はぁ~、きゅんきゅんする。
私、きっと、こういう、丁寧に描かれた、写実的かつ、温もりのヴェールをまとったような絵が、好きなんだなぁ。人間が描くことで、写真より、もっと、リアルになる。いつまでも、眺めていたくなります。
前に支援学校の授業を参観させていただいたときに、この絵本が1人1冊、教材として本棚に並べられていて、おぉ~!絵本が教科書になるんだなぁ、と、びっくり!そして、素敵だなぁと思った。普通学級では決められた教科書を使って学習するけれど、支援学級や支援学校では、ケースに応じて、文科省指定の教科書ではなく、それぞれのお子さんに合った教材を選んで使うことができる。確かに、これは、いい本だなぁ。果物の名前。色。形。やさしいひらがな。コミュニケーション。
もう40年も前の絵本なのね。絵本に閉じ込めた瑞々しさは、決して廃らない。
前に“マツコの知らない世界”で毎日読み聞かせをしてきたお母さんがこの本を紹介していた気がする!思い違いだったらごめんなさいっ!
カットされたフルーツ子どもに「さあ どうぞ。」って読んだら、あむあむって食べるまねっこをするんだって。
さて、息子と読んでみましたら、やっぱり、食べてたよ!ガツガツむしゃむしゃ!!
そこで『ママにもちょうだい』と言ってみる。
「いいよ♡ あ~んして♡ おいしい?」
『わぁ~♡ おいしい~! ありがとう~!』
な~んてゆったりしたふれあいを妄想したりもしましたが、
現実は、「はいママ食べて~~」って塩対応気味に忙しくおすそ分けしてくれました。
5歳男児はそんなもんじゃな。
『くだもの』 1981年(こどものとも年少版は1979年)
発行所 福音館書店
平山和子 作