『おこだでませんように』 くすのき しげのり・作 石井聖岳・絵
もうすぐ七夕ですね。
息子も何となく文字が書けるようになってきたので、今年は一緒に短冊書きに挑戦しようかな。
どんなお願い事をするのかなぁ。
お話の 主人公は、いつでも、どこでも、怒られてばかりの「ぼく」。
ぼくにも想いはあるのに、ぼくだって頑張っているのに。
【ぼくは……「わるいこ」なんやろか……。】(本文より)
そんなぼくが七夕の短冊に書いたのが「おこだでませんように」(怒られませんように)の10文字だった…
この本は、初めて読んだときに強い衝撃を受けたことを覚えています。
なんかもう、胸がギュウウウウウってなる。
学校で先生だった私として、今、子どもたちのゆっくりな成長をサポートしている大人として、お母さんとして。
「ぼく」の想いに、そして、救われる喜びに、ふと頭をよぎるたくさんの後悔に、涙が出てくる。
作者のくすのきしげのりさんは、小学校の教員でいらしたそう。そして、「おこだでませんように」と書かれた短冊は、くすのきさんご自身が教員だった頃に実際に目にしたものなのだそうです。
怒られませんように、が、”おこだでませんように”に聞こえる「ぼく」
「ま」の文字が鏡文字になってしまう「ぼく」
ぼくの行動にも、ぼくなりの理由があるのに、理解してもらえない「ぼく」
「困った子は、困っている子」
…周りから見た”困った子”は、自身が困っているのだ、という考え方。困った子、という表現はあんまり好きじゃないけれど…言いたいことは端的に伝わると思う。私もいつも心に留めておきたい。
今、私は、運動を軸にした療育の仕事をしているけれど、自分の役割としては、情緒面でのサポートも大きいと思っているから、「できた!」につながるサポートをしながら、何か、救いになるような、背中を押してあげられるような関わりを目指していきたいなぁと思う。
…でも、今療育を受けられている子どもたちは、周りの大人が、気づいて、より良い方へと導こうとしてくれている子どもたちなんだよな…”より良い方へ”力を尽くせるようにちゃんと精進しないとな、と思うと同時に、周りの大人に気づかれずに、生き辛く、苦しく、日々を過ごす子どもたちもいるんだよなぁ、と思う…私に、社会に、できることって、何なんだろう。
ぐるぐる、ぐるぐる。生きる、とは、暮らす、とは。
人はみんな、それぞれ心の中で、必死に、いろんなことを想いながら生きている。
それなのに、歩み寄れなかったこと、寄り添ってあげられなかったこと…いっぱいあったなぁ。
”君のこと、ちゃんと、見てるよ。大事に思ってるよ。”
伝わっていたかな。ちゃんと伝えないとな。
今日だって、これからだって。
読んであげることで、子どもたちのなかに、そうだそうだ、と密かにうなずく子がいたなら、抱きしめてあげたい。大丈夫だよ、君のこと、大事に思ってるよ、って伝えたい。
私も、まだまだ、青い。
大人に染みるお話かもしれません。
『おこだでませんように』 2008年
発行所 小学館
作 くすのき しげのり 絵 石井聖岳