『もうぬげない』 ヨシタケシンスケ
“ぼくのふくが ひっかかって ぬげなくなって、
もう どのくらい たったのかしら。”(本文より)
お洋服が頭と肩に引っかかったまま、ポヨンと丸いお腹を丸出しにしている少年。
お母さんがお風呂に入ろうって、急いで脱がそうとするもんだから、洋服がひっかかって、脱げなくなっちゃった。いろいろやってみたけれど、ちっとも脱げないみたい…このままずっと脱げなかったらどうしよう……!
作者は、ヨシタケシンスケさん。言わずと知れた今をときめく絵本作家さん。小学生も大好き!
『もうぬげない』は、第9回のMOEの絵本屋さん大賞で、栄光の第1位を受賞した作品。
ベイビーの出産祝いで、音楽を共に紡ぐ相方様からプレゼントしてもらいました!
「持ってるかなぁと思ったんだけど…」
ううん!持ってなかったっっ!!!超うれしーーーー!!!!!
ベイビーが面白さを理解できるのはもう少し先の話なので、まずは長男と一緒に。幼稚園でも読んでもらっていたみたいで、表紙を見ただけで大喜び!私が読み始めようとしたら、先に声を出して読み始めたァァ~~!というわけで、前半は彼が、後半はママが読み手となって、お互いに読み聞かせをしました笑
やっぱり、面白いね~~!!!
洋服が脱げなくなっちゃった焦り!このままずっとこうだったらどうしよう…という絶望!!子どもの頃は、日常の中で、まさにそんなことに遭遇したり悩んだりしていたような気がする。
その着眼点、そしてそれを膨らませていく想像力…あああ、素敵ですヨシタケワールド。
そういえばさ、大人になると服が脱げなくなって泣いたりすることって無くなるよね。自分のサイズが分かって洋服選びが上手になったんだろうし、きっと体が成長しないからさ、気付いたら小っちゃくなってた!ってことも無くなったのかも。あ、でも、太ったらそんなこともあるかも!?
ずいぶん前に情熱大陸でヨシタケさんに密着した回を観たのだけれど、当時『おしっこちょっぴりもれたろう』の製作中で、漏れてるパンツのシミの色!形!にすごくこだわっていた姿が強く印象に残っている。素朴で易しく見える、その絵の、言葉の、文字の、絶妙な愛おしさが、完璧に練られ、追い求められた姿なのだと思うと、プロの腕の奥深さにただただ感服してしまう。
『もうぬげない』の絵も、本当に絶妙なのだ。形も、色も。
ちょっと前にEテレの美の壺でバレエを取り上げている回があって、その時にバレエの先生が「足よ!足!」と言っていた。人の動きで最も感情が出るのは、足、なんだって。
まさに『もうぬげない』は、足の動きの芸術。だって上半身は動かないんだから!!!
その足の、脚の、出で立ちに、”ぼく”の感情の全てが詰め込まれている。あああ、ヨシタケ様の手腕…!”ぼく”が、ものすごく愛おしくなります。
ヨシタケシンスケさんはたくさん本を描いていらして、その中には、すーごく面白いけれど複雑に入り組んでいる絵や言葉たちを眺めてムフフと拾い読むのが楽しくて、集団での読み聞かせはしにくい作品もあるように思う。
でも、『もうぬげない』は、1本のストーリーになっていて、楽しくて笑えて読みやすい!お話の長さもとってもいい!
みんなで笑って楽しめる、読み聞かせのテッパン本です。
読んだことがある人も、ない人も、ぜひ、「足」の可愛さに注目して読んでみてね♡
『もうぬげない』 2000年
発行所 ブロンズ新社
作 ヨシタケシンスケ