『あなのはなし』 ミラン・マラリーク さく 間崎 ルリ子 やく 二見 正直 え・あな
長男がジャケ借り。
『あなのはなし』…確かに、惹かれるタイトル。
作者、訳者、お、原作は外国の方か。絵は、二見正直さん。
…ん?
“え・あな”
…あな?
“はじめはくつしたにあいただけだった、
ちいさな「あな」。
しかし、だれもその「あな」を
つくろってくれなかったので、
とうとう旅に出ることに決めたのです。”(そで より)
なんと、主人公は、穴。
穴ったら、穴、なのだ。本当に。
穴のところは、絵じゃなくて、本当に、ページに穴が空いている。
穴から手と足生えてるし。斬・新!
長男、穴の絵にイチイチ爆笑。わかる。穴、可愛いわ…!特に小屋で桶の中でひっくり返って寝てるのがおすすめ。
途中で、桃太郎の如く、ドーナツ、カエル、ツバメ、ヒツジの仲間に出会いながら、穴は旅を続ける。いきなりドーナツに出会うから、“穴”つながりなのかと思いきや、次からは、普通に動物っていう何でもアリな感じ。
そんな彼らを、実はオオカミが狙っていて…
いやー、なんでしょう、この世界観。
作者のミラン・マラリークさんは、1912年にチェコに生まれ、1987年に亡くなっています。チェコって言われると、登場する動物とか、靴下、とか、何ともチェコっぽいお話な気がしてくる。
外国のお話の雰囲気をそのままに、シュールと、オシャレと、笑いに、落とし込む絵・そして、穴。
とにかく穴が愛しくて、追って来るオオカミを絵の中から探しながら、あはは、なんじゃこりゃ、と読んでいるだけで面白いんだけど、読み終わった後には、ざらざらとした拭い去れない違和感のようなものが、何となく口の中に残っている。
靴下は?オオカミは?どこへ行ってしまったのだろう。おしまい、のページが、なんだか、こわい。
「べつに どこへも。ただ、よのなかを みたいと おもってね」(本文より)
穴。
なんだか、印象的なお話でした。
飲み込まれちゃうぜ。
『あなのはなし』 2014年
発行所 偕成社
作 ミラン・マラリーク
訳 間崎 ルリ子
絵・あな 二見 正直
今週のお題「読書の秋」