『まるいちきゅうのまるいちにち ALL IN A DAY』 安野光雅/編
表紙を見て、ズキューン!
なんだか、これは、とっても素敵な絵本の予感。
だってだって!扉絵の作者名には、ズラリ、世界の巨匠たち。
レイモンド・ブリッグス
ニコライ・ポポフ
林 明子
ジァン・カルビ
レオ&ダイアン・ディロン
朱 成梁
ロン・ブルックス
不勉強で知らない方も多いけれど、エリック・カールと林明子、というだけで、その豪華さがわかる。他の方も、名前は知らなくても、見たことがあるタッチの絵がちらほら。すごいぞ、これは。
この絵本では、1月1日のロンドンのグリニッジ標準時0時に合わせて始まる8つの国や地域、そして架空の無人島の“いま”を同時進行で覗くことができる。
“あなたが あそんでいるとき
とおくの国では
ぐっすり ねむっている子が います。”(まえがき―この本をみる子どもたちへ― より)
イギリスが1月1日0:00のとき、日本は1月1日の朝9:00。
イギリスの子どもがベッドで寝ているとき、日本ではお正月の晴れ着を着た女の子がお母さんに髪を結ってもらっている。
その頃のモスクワでは夜中の新年パーティー、3:00のケニアでは夢の中。中国ではお正月の遊びをしているし、オーストラリアではもうお出かけの時間。だというのに、シカゴとブラジルはまだ12月31日。
ページをめくる度に3時間ずつ時は流れて、見開き8ページ分、24時間、いろんな国と地域の丸一日が描かれていく。
日本ではお正月と言えば寒いイメージだけれど、南半球の国はなんだか暑そう。モスクワでは雪遊びをしているというのに、オーストラリアでは海水浴。
よく見れば見るほど、いろんな発見があって、服装や家の中の様子、家具、飾り、遊び、人々の関わり…いろんな文化の違いが、また一方で、共通する人々の暮らしが、小さな絵たちの中にたくさん見て取れる。
寝る前に息子と絵本を読みながら、今、日本は寝る時間だけど、イギリスではお昼ごはん食べてるってよ、って言ったら、え~!!!と驚いていた。
中2の終わり、姉妹都市交流でアメリカのインディアナ州に1週間ほどホームステイしていたときに、ベッドで眠りにつきながら、「みんなは今頃給食かぁ~~…」と思いを馳せたことを思い出す。“ここ”にいる自分と、“あそこ”にいるみんな。自分は今、本当に遠い場所にいるんだ、と、不思議な気持ちになった。
その後も息子は今の時間を調べてみる!!と、昼夜問わず絵本を開き、その時間の日本時間のページを開いては、他の国々の子どもが“いま”何をしているのかを調べてニヤニヤしていた。
“あなたたち みんなが
いつまでも なかよく くらせる
すばらしい 地球であることを ねがって
この本を つくったのです。”(まえがき―この本をみる子どもたちへ― より)
「他の国の子どもたちは今、何をしているのかなぁ…。」
それを思い浮かべるだけで、想いを巡らせるだけで、相手を身近に感じながら、融和の心は育まれていくのかもしれない。
息子が自然とそれを楽しんでくれることが、なんだかとっても、嬉しかった。
本文は子どもたちのやりとりで成っていて、読み聞かせ向き、という感じでもないのだけれど、いろんなことに触れながら素敵なブックトークができそうだし、遊びや学習の資料にしてもいい。何より、眺めているだけで、なんだか楽しいのです。
いろんなタッチで描かれた上質な絵たちと、言葉と。
地球は広いんだ、いろんな人たちがいろいろに生きているんだって、絵を眺めているだけで、感じるんです。体感、しちゃうんです。
時は1986年。ロシアがソビエトだった時代。ちょっと古い本ではありますが、それもまたよろし。
手元に置いておきたい。とっても、素敵な本。
さて、今年の4月から綴り始めたブログ。たくさんの方にご覧いただき、大変ありがとうございました。来年も楽しんでいただけるように、自分にとって実りある心の財産となるように、ぼちぼち、しっとり、しっかり、頑張っていきます。
2021年が、どうか、どうか、皆様にとって、世界中の全ての人にとって、幸せな1年になりますように。
今の世界を取り巻くチクチクしたものやモヤモヤしたものが、どうか少しでも和らいで、みんなの心が癒されていきますように。
また来年、お会いしましょう!
『まるいちきゅうのまるいちにち ALL IN A DAY』 1986年
発行所 童話屋
エリック・カール/レイモンド・ブリッグス/ニコライ・ポポフ/林 明子
ジァン・カルビ/レオ&ダイアン・ディロン/朱 成梁/ロン・ブルックス