『天女銭湯』 作 ペク・ヒナ 訳 長谷川義史
『あめだま』のペク・ヒナさん、そして長谷川義史さん。
これは、『あめだま』よりも前の作品。
これまた、とてつもないインパクトの表紙!!!図書館で息子が吸い寄せられるように選んで来ました。「ねぇ見てぇ~!ヤクルトぉぉ~!」って言いながらニヤニヤ。超ビビリ~な彼ですが、この表紙は怖くないんだな!笑
『天女銭湯』って、なんだかもう、まず、テーマが斬新。天女…韓国ではポピュラーなのだろうか。
そもそも天女とは、何なのか。
私の「テンニョ」のイメージは、羽衣を羽織って、頭の上で髪がふゆ~んって2つの弧を描いている若い女子。天の川に分かたれた織姫とか、竜宮城の乙姫とかさ。
ところがどっこい、表紙におはしますのは、年季の入ったオバハン。頭の上にまとめられた髪の毛は、まるで布団叩きの如し。
スマホで“天女”と調べたら、
「天上界の女性。吉祥天女・弁財天女など。また、この世に二人といないような美しい女性をたとえていう語。」(goo辞書より)
だってよ。
ふ~む、なるほど弁財天…こちらもとてつもなく美人だという噂だが…オバチャン、ホンマニテンニョサンカイナ。
ちなみに、英語でのタイトルは“The Bath Fairy”となっていたぜ。フェアリー!
主人公はドッチちゃん。女の子。
近所にある、ふる~い銭湯に、お母さんとやってきた。頑張ってあかすりをしたらヤクルトを一本買ってもらえるのだという。
そして、大好きな水風呂で遊んでいるとき、いきなり天女のばあちゃんが現れた!天女のばあちゃんは…水風呂遊びのプロだったのです…!
いや~、またしても、登場人物たちの表情が、すごい。いや、ページ一面全てがすごい。体の丸みも、しわも、質感も。水の泡も、なびく髪も。銭湯のちょっとキタナイ感じまで。風邪ひいちゃったドッチちゃんの青緑な顔とか、もはやグロテスクだもんね。なんでこんなにすごいんだろう。そして、なんて愉快なんだろう。
ペク・ヒナさんのプロフィールに「自称人形いたずら作家」と書かれていたけれども、本当に作品作りを楽しんでるんだろうなぁ~というのがすご~く伝わってくる。クリエイティブ。
作中に「天女ときこり」という昔話のタイトルが出てくるのだが、韓国ではみんな知ってるお話なのかなぁ?調べてみたい。
さてさて、10年以上前に韓国に行ったときに、「十六茶」ならぬ“十七茶”ってのが売ってて超笑ったんだけど…きっと天女のオバハンが飲んでるのも、「ヤクルト」じゃなくて“ヤクルト的なやつ”なんじゃろな。
写真に、人形に、ただ、ただ、うっとりしちゃいます。ビンワン!
『天女銭湯』 2016年
発行所 ブロンズ新社
作 ペク・ヒナ 訳 長谷川義史