『きたかぜさま』 星野なおこ 文 羽尻利門 絵
こどものとも12月号!年の瀬もすぐそこなのね…!
表紙には、“たかたかすぎ”と呼ばれる大きな杉の御神木。
それを見上げる少年二人、「しょうた」と「ごろう」。
二人の住む村では、毎年12月1日に「きたかぜさま」のお祭りが行われ、来年1年生になる二人は、うちわを扇ぎながら村巡りの列の先頭を歩く大役を担う。
村の人々は、
「きたかぜさまじゃ、ありがたや。もっと もっと かぜ ふかせておくれ」
「うちの わるいもの みんな はらっとくれな」 (本文より)
とありがたがって村で取れた作物やお菓子をくれたり、みんなで集会所に集まってごちそうを囲んだり。
「きたかぜさまって ほんとうに いるのかな?」と、二人は集会所を抜け出してたかたかすぎのところまで走っていく。そこには、お供えされている山積みのりんごを次々とかじっている女の子がいて…
ページをめくればまさに、秋の色。そして、冬の色。風の吹く様子がダイナミックに描かれていて、見ているだけで冷たい風を感じるような気がしてしまう。
長男は、空を飛んで風を吹かせているシーンが心に残ったみたいで、後になってから「空って本当に飛べるのかな」と呟いていた。
“作者のことば”によれば、このお祭りはフィクションで、このお話自体は10年前に書かれたものだという。でも、なんだか、どうして、今の状況にぴったりのお話ではありませんか。
作者の星野なおこさんがお話しされているように、風、というものは、悪いものをみんな吹き飛ばして、心を晴れ晴れとさせてくれるものなのかもしれない。
この鬱々とした世を、スカーーッと通り抜けて、清めてくれる風が吹いたら。
冬はあんまり好きじゃない、と思っていたけれど、冷たい風のその潔さに、気付かせていただいた気がします。
昨日、窓を開け放って車を走らせていたら、目の前に秋の青くて広い空がワァァっと広がって、黄色い風が車内をくるくるっと駆け巡るような感覚が。
つい先日、長男と読んだ『きたかぜさま』を思い出して、帰ってくるなりパソコンの前に座ったのでした。
秋、一面。あまりにもキラキラとしているから、真正面に見える鉄塔がエッフェル塔に見えたんだよ。本当だよ。
月刊予約絵本「こどものとも」
『きたかぜさま』 2021年12月号(通巻789号)
発行所 福音館書店
星野なおこ 文
羽尻利門 絵