『いなりまちゆき きつねでんしゃ』 鍋田敬子 作
こどものとも10月号。
一人で電車に乗って上ノ村のおじいちゃんのところに遊びに行くことになった“こうすけ”。4番線の電車にぎりぎり駆け込んで揺られていると、目の前には、だんだん見慣れない景色が…。なんと、それは、きつねが住む「いなりまち」行きの電車だったのです…!
このお話は、作者の鍋田敬子さんの幼き日の思い出がモチーフになっている。
鍋田さんは子どもの頃、ご実家のうどん屋さんが忙しいときに、高松市の瓦町からバスに乗って上ノ村のおじいさんおばあさんのお家へ1人で行くことがあったのだそう。その時の経験や、旅行で訪れた道後温泉のライトアップ、金比羅宮へのお参りで乗った琴平電鉄、八幡宮の秋祭りなど、小さい頃に見て感じたいろんな思い出が、この絵本に詰まっているのだそうです。
優しくてあったかい、手書きの絵。
前にも読んだことがあるような気がしてしまうのは、なぜだろう。
子どもの頃から親しんできた懐かしい感じ。
こういう新作が今の時代も生まれていることが嬉しくなりました。
秋ってやっぱり、いろんな感覚にいろんな感情を訴えかけ、染み込んでくる季節なのだと思う。懐かしくて胸がきゅんとなる楽しいお話と、絵の一枚一枚が、丁寧に心に訴えかけてくる。秋にぴったりの絵本でした。
長男は「こどものとも」が月初めに届くのが楽しみになっていて、今回もポストに入っているのを見つけて嬉しそうに取り出すと、自分で開いて読み始めていました。
だいぶ文字も正しく読めるようになってきて、絵の助けもあってか、1回読んで大まかなあらすじは掴んだ様子。私と一緒に読んだときには、「次は〇〇になるんだよ」なーんて、お話のその先をナビゲーターの如く知らせてくれました。おいっ、ネタバレかよっ!!!
いろんなことに夢中になったり、副反応でダウンしたりしている間に、なんだかこんなにも時間が空いてしまってびっくりしていますが、私は元気です。
みなさんも、元気ですか?
秋は、来ましたか?
月刊予約絵本「こどものとも」
『いなりまちゆき きつねでんしゃ』 2021年10月号(通巻787号)
発行所 福音館書店
鍋田敬子 作