絵本ライブラリー 読む、残す、思い出す

2020.4.1スタート。元小学校教諭,小2&2歳兄弟育児中の筆者が,読み聞かせをした絵本を中心に書籍の記録・紹介を行っています。自分と、子どもたちと、本との軌跡を記しておきたい。筆者の肌感覚によるカテゴライズもしております。昔の記事も振り返って楽しんでもらえるブログを目指したい。

ぼくはヨハネス・フェルメール

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『ぼくはヨハネス・フェルメール』 さく・林綾野 え・たんふるたん

 

芸術の秋、だからでしょうか。なんだかアートに心惹かれる今日この頃です。

 

ヨハネス・フェルメールといえば、言わずと知れたオランダの画家。光を巧みに描き、光の魔術師と呼ばれています。『真珠の耳飾りの少女』はあまりにも有名ですね。

 

この本は、フェルメールの一生について、フェルメール自身が、「ぼく」という視点で語っている1冊。生まれてから画家になるまで、画家としての日々、一人の人間としての葛藤、そして、その死後から現代まで。ぼく、が物語を語っていることで、昔、遠い国で生きていた画家なのに、なんだか、ぐっと、身近に感じられてしまう。

 

宿屋の息子だったこと、破天荒な親戚がいたこと、絵に触れながら育ってきたこと、反対されながらも愛する女性と結婚し、たくさんの子どもたちに恵まれていたこと、いろんな想いを込めて絵を描いていたこと、悲しみや貧しさを乗り越えながら生きていたこと、死後も家族にはいろんな困難が待っていたこと…

フェルメールの死後、妻は子どもたちと生きていくためにフェルメールの絵を手放し、破産申告をします。皮肉にも、その破産申告の調査によって、フェルメールの家の間取りや家具、絵の道具などの記録が現代にまで残されていたようです。

 

フェルメールのことなんて全然知らなかったけれど、なんだかとても愛おしく、魅了されてしまいました。

 

ラピスラズリを砕いてつくるフェルメール・ブルー。絵の具って、自分で作るものなのね。そりゃあ、絵の具のチューブをブチュー、ではあの美しい色が出せないわけです。

でもさ、やっぱり、あの色こそが、絵を輝かせ、唯一無二の存在感を際立たせているのだと思う。魅力的。見とれてしまいます。

 

本編の後ろには、有名作品の解説や、全作品の一覧、フェルメールにまつわるミニエピソード、年譜など、愉しいおまけ(おまけじゃないと思うけど!)も。

 

絵も、言葉も、フォントも、白地の色の美しさまで。なんでしょう、ゆっくりとページをめくっていく度に心が揺れ、満たされていくような、とても上質なひとときでした。

 

易しい言葉で書かれているので、子どもにも読みやすいとは思いつつ…

秋の夜長に、お茶でも飲みながら、一人でゆっくり読みたい1冊。

 

『ぼくはヨハネス・フェルメール』 2014年

発行所 美術出版社

作 林綾野 

絵 たんふるたん