『ぼくはヨハネス・フェルメール』 さく・林綾野 え・たんふるたん
芸術の秋、だからでしょうか。なんだかアートに心惹かれる今日この頃です。
ヨハネス・フェルメールといえば、言わずと知れたオランダの画家。光を巧みに描き、光の魔術師と呼ばれています。『真珠の耳飾りの少女』はあまりにも有名ですね。
この本は、フェルメールの一生について、フェルメール自身が、「ぼく」という視点で語っている1冊。生まれてから画家になるまで、画家としての日々、一人の人間としての葛藤、そして、その死後から現代まで。ぼく、が物語を語っていることで、昔、遠い国で生きていた画家なのに、なんだか、ぐっと、身近に感じられてしまう。
宿屋の息子だったこと、破天荒な親戚がいたこと、絵に触れながら育ってきたこと、反対されながらも愛する女性と結婚し、たくさんの子どもたちに恵まれていたこと、いろんな想いを込めて絵を描いていたこと、悲しみや貧しさを乗り越えながら生きていたこと、死後も家族にはいろんな困難が待っていたこと…
フェルメールの死後、妻は子どもたちと生きていくためにフェルメールの絵を手放し、破産申告をします。皮肉にも、その破産申告の調査によって、フェルメールの家の間取りや家具、絵の道具などの記録が現代にまで残されていたようです。
フェルメールのことなんて全然知らなかったけれど、なんだかとても愛おしく、魅了されてしまいました。
ラピスラズリを砕いてつくるフェルメール・ブルー。絵の具って、自分で作るものなのね。そりゃあ、絵の具のチューブをブチュー、ではあの美しい色が出せないわけです。
でもさ、やっぱり、あの色こそが、絵を輝かせ、唯一無二の存在感を際立たせているのだと思う。魅力的。見とれてしまいます。
本編の後ろには、有名作品の解説や、全作品の一覧、フェルメールにまつわるミニエピソード、年譜など、愉しいおまけ(おまけじゃないと思うけど!)も。
絵も、言葉も、フォントも、白地の色の美しさまで。なんでしょう、ゆっくりとページをめくっていく度に心が揺れ、満たされていくような、とても上質なひとときでした。
易しい言葉で書かれているので、子どもにも読みやすいとは思いつつ…
秋の夜長に、お茶でも飲みながら、一人でゆっくり読みたい1冊。
『ぼくはヨハネス・フェルメール』 2014年
発行所 美術出版社
作 林綾野
絵 たんふるたん