『ぱんつさん』 たなかひかる
これは、息子に絶対ウケるだろうなぁと思った。
だって、表紙がすでに面白い。題名がすでに面白い。
おしり、とか、そのモノにはちょっぴり恥じらいのある私ですが、パンツは、笑える。パンツは、愛せる。
パンツって、なんで面白いんだろう。
なぜか笑えてしまうパンツ。愛しいパンツ。いろんなパンツが出てきてゲラゲラ笑ってハイおしまい!な楽しい本だろう、と、高を括ってページをめくる。
と、
あれ?
もこ もこもこ?谷川俊太郎?
いえいえ、地面から出てきたのはパンツをはいた4人の男たち。
パンツ一丁で準備体操~。かわいい。ああ、やっぱり癒し系の本か、と思う。
が、
「ん?」(本文より)
そのパンツ一丁男を包み込むほどの大きな手で、彼を持ち上げる巨人が。同じくパンツ一丁であったその大きな手の主は、先ほど準備体操をしていたパンツ一丁男を栓抜きにして瓶のフタを開け、ジュースを飲んでしまったのです…!
すると背後から太い縄が…さらに大きなパンツ一丁の巨人がジュースを飲むパンツ一丁の男を捉え、ネックレスのチャームにして縄に通し、これまたパンツ一丁の巨人友達にプレゼントしてしまう。
も、
「ん?」(本文より)
またしても、これまたパンツ一丁のさらなる巨人が彼らをつまみ上げて…
何だこの話は!!!!!あらすじが伝わってる自信がない!!笑
ツッコむべきは、もはやパンツではない。
自分には到底かなわない大きなものに操られ、目の前一面に見えていた世界が、ほんのちっぽけなものだったのだと、裏切られ続けていく感覚。
なんだろ、なぜか傷つきさえするような。笑
やばい、話じゃ、こりゃ。
息子は単純に楽しんでいたけどな!フハハハハ!
いつか、この世界は、とてつもない巨人に操られていて、ドールハウスのように、箱庭のように、人間は駒として扱われ、もてあそばれているのではないか、と妄想したことがある。
なんか、そんな感じ。
最後には、もはや、パンツなんかどーでもよくなっている。
でも、パンツの柄に、癒される。
ゆるい、問題作。
『ぱんつさん』 2019年
発行所 ポプラ社
作 たなかひかる