『きょうは そらに まるいつき』 荒井良二
荒井良二さん。
開隆堂の図工の教科書の最初に、教科書1冊につき、1名、今活躍する著名な芸術家がフィーチャーされ、その方の作品や、作業の様子、子どもたちへのコメントなどが載っているページがあった。(教科書改訂で、変わっているかもしれないけれど…)
私が荒井良二さんを知ったのは、そちらのページにて。何年前のことだろう。
見た瞬間に、「やられた!!」と思った。
鮮やかな色づかい、ヘタウマな子どもの字。こりゃー、素晴らしき子どもの世界だ!!と思った。
字を覚えたばかりの子どもたちが書く文字って、何とも言えない、素晴らしい魅力がある。
マイボーイも、まさに、今、一生懸命お手本を見ながら愛しい文字を書いている。
そのあどけなさを、その未完成な無限のパワーを、作品、にしてしまうのだから、もう、ずるい。やられたっ!!
そんなわけで、勝手に私の中で荒井良二さん=子どもの世界、みたいな勝手なイメージで膨らんでいったんだけど、絵本も何冊か読んで、やっぱり絵が素敵で、面白くって子どもが理解しやすい作品もたくさんある中で、結構抽象的なお話もあるから、ああ、わりと大人向けなテイストもあるのだな、なんて思ってたら、『きょうはそらにまるいつき』は美しくてストーリーがシンプルで、息子も楽しめるだろうなと思ったので借りてみました。へへ。
まず、開いて、
…ゴッホ!
いや、私、そんなに美術のことは分からないけれど、ゴッホ的色遣いに、あたたかみのある手書きの文字。冷ややかな、夜の空気に浮かぶ、まるい月。
いろんな人が、いろんな生き物が、いろんな場所で、同じ月を見ている。
ロマンチック。
どんなに車を走らせても、ついてくる、月。
遠く離れていても、一緒に眺められる、月。
誰もが、何かしら、月、に魅了され、思いを巡らせた経験があるのではないかと思う。
あっという間にお月見の季節だなぁ。
中秋の名月に。
『きょうはそらにまるいつき』 2016年
発行所 偕成社
著者 荒井良二