絵本ライブラリー 読む、残す、思い出す

2020.4.1スタート。元小学校教諭,小2&2歳兄弟育児中の筆者が,読み聞かせをした絵本を中心に書籍の記録・紹介を行っています。自分と、子どもたちと、本との軌跡を記しておきたい。筆者の肌感覚によるカテゴライズもしております。昔の記事も振り返って楽しんでもらえるブログを目指したい。

あんぱんまん

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『あんぱんまん』 作・絵 やなせ・たかし

 

丸いお顔にツヤテカのお鼻とほっぺ。手袋、ブーツ、ベルトにマント。

 

ニッポンジンなら、知らない人はいないと言ってよいだろう、アンパンマン

 

ベイビーズなら絶対通る道、アンパンマン大好き期。

 

いつも自信に満ちていて、ハリのある声。あんこがぎゅうぎゅうに詰まったピッカピカの顔。

 

 

でも、この絵本のあんぱんまんは、体はひょろっと細長く、マントもつぎはぎだらけ。表情も、あのパッチリおめめの元気はつらつなアンパンマンとは、ちょっと違う。    

 

あんぱんまんは、砂漠の真ん中でお腹が空いて倒れている人、森の中で道に迷ってしまった男の子を助け、自分の顔を分けてあげる。最後にはひとかけらも残されず、すっかり食べられながら…。

「おじさん」という名前で、ジャムおじさんも登場。アンパンマンの顔には、ジャムおじさんの優しさと愛情がたっぷり詰まっているのね。だからこそ、食べた人が元気になれるんだな。

 

身を削り、ボロボロになってでも、相手を助ける。

バイキンマンに対しても、罪を憎んで人を憎まない。

アンパンマンに著される本当の正義。

 

 

かつての道徳の教材にも載っていた、やなせさんのあとがきが、とっても胸に染みる。

 

(あとがきより)

「ほんとうの正義というものは、けっしてかっこうのいいものではないし、そして、そのためにかならず自分も深く傷つくものです。」

「さて、こんな、あんぱんまんを子どもたちは、好きになってくれるでしょうか。」

…超好きになってます!伝わってます!!!

この絵本には、バイキンマンは出てこない。アンパンマンが戦うのは、飢えや孤独。やなせさんの強いメッセージが込められている。

夫がクラスで読み聞かせたら、5年生も真剣に聴いていたそうです。

 

やなせたかしさんって、す~んごい有名で、作品も多くて、若いときからバリバリ☆アンパンマンを描いてきたのかな、って思っていたのだけれど、初めて「アンパンマン」を発表したのは、1969年。やなせさんが50歳の時だったそう。そこから、94歳で亡くなるまで、子どもたちのために、素晴らしい作品を生み出し続けてきたのね。叔父が仕事でやなせさんとお会いしていたのですが、お年を召しても少年のようにキラキラと目を輝かせる、素敵な方だったそうです。

 

ヒーローとして、自分の顔を分けてあげるという優しさ、強さ、その斬新さ。アンパンマンを知らない人に、この本を、1冊の絵本として、最初に読んでみてほしいなぁと思う。どんな反応をするだろう。どんなに、胸を打たれるだろう。

 

…今、日本で生活している子は、1、2歳でだいたいアンパンマン大好きになっちゃうから、難しいかもしれないけどね!笑

 

『あんぱんまん』 1976年

発行所 フレーベル館

著者 やなせ・たかし