『五十音』 北原白秋 詩 高畠純 絵
「あめんぼ あかいな あいうえお」
と言えば、発声練習の代表格。
三々七拍子を彷彿とさせるような、日本語的にキモチイイ・リズム。
思い浮かぶのは、ジャージ姿の演劇部の高校生が、青空の下で汗をかきながら発声練習してる風景。ただの妄想ですが。
俳優さんとか、アナウンサーさんとかも、やるよね。
「あ・え・い・う・え・お・あ・お」とかね。
私も年々滑舌が悪くなっているような気がして、練習したら少しは改善するのだろうかと思いつつ、滑舌が良くなったところで何に生かせるのかとか考えるけど、そんなこと思うまでもなくすらすら文章が読めたら気持ちが良いし、脳トレにも良さそうだし、小顔効果もありそうだから、やってみれば良いと思うけれど、とりあえず息子に絵本を読むときにちゃんと伝わるように読めるように練習をしていくことで、滑舌の悪化を食い止めながら自分の表現力も磨いていけたらいいんじゃないかなとか思ったりしちゃったりなんだり。
さて、この「あめんぼ あかいな あいうえお」から始まる『五十音』の詩を作ったのは、『からたちの花』とか『この道』の作詞者でもおられます北原白秋。そうだったのか。
北原白秋の童謡集『祭の笛』に所収されているのだそうです。
それを現代かな遣いに直し、一部改変を加えたものが、この絵本の詩となっているそうです。
高畠純さんの絵が、またユニークで、言葉のイメージを捉える手助けにもなっていて、なんだか楽しい気分になる。美しいのに真面目過ぎない、詩のテイストにぴったり。
「あめんぼ あかいな あいうえお うきもに こえびも およいでる」
この26音で、あ行が網羅されている。そして、同じ調子でか行、さ行…と続いていく。
五十音を使った言葉遊びだけれど、あいうえお作文的な頭文字の縛りは無く、なんて言うか、けっこう、ゆるい。
絵本では、ひらがなの詩とイラストとで進んでいき、最後のページに漢字を交えた詩の全文が載っている。
この詩の全体の感じが、なんだか、すんごく、素晴らしいなぁ~。なんだろな。自然の、生き物の、人々の生活の一コマが、26音ずつの短い言葉遊びにぎゅぎゅっと詰まっている。匂いたつようなコミカルさ、リアルさ、美しさ。それでいて、肩の力が抜けている。ふへへ。やっぱり、巨匠。
学習発表会とか音読発表会でも使えそうな詩ですねっ。
『五十音』に取り組む際の導入アイテムには、ぜひ、この絵本を使いたい。
『五十音』 2020年
発行所 光村教育図書株式会社
詩 北原白秋 絵 高畠純