絵本ライブラリー 読む、残す、思い出す

2020.4.1スタート。元小学校教諭,小2&2歳兄弟育児中の筆者が,読み聞かせをした絵本を中心に書籍の記録・紹介を行っています。自分と、子どもたちと、本との軌跡を記しておきたい。筆者の肌感覚によるカテゴライズもしております。昔の記事も振り返って楽しんでもらえるブログを目指したい。

ボタンちゃん

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『ボタンちゃん』 小川洋子 作 岡田千晶 絵

 

小川洋子さん!

 

2年前に学校の図書室で発見し、小川洋子さんって絵本も書くんだぁと嬉しくなって、2年生の子どもたちに紹介した本。近所の図書館でも再発見!うれぴー。

 

その時、クラスで“読書の木”という試みをしていて、りんごの形の付箋に週に1冊、読んだ本の感想を書いて、模造紙に描いたでっかい木に貼り、本の紹介をし合う活動をしていた。

私が描いたオソマツな巨木も、子どもたちがかわいい字で好きな本の紹介をして彩ってくれて、イラストとかも描いてくれちゃったりして、すごく愛しくて、眺めるのが好きだったなぁ。その付箋で紹介したのよね。

もちろん、本が好きな子もそうでない子もいたけれど、み~んなが素直に、書いてくれてたなぁ…

あとは、先生の本棚、というのを作っていて、自分の本を持って来て置いたり、図書室で定期的に本を借りて、その時期の学習に関連した図書とか、季節の本とかを置いたりもした。内容もよく知っていてオススメの本として置いていた本もあったし、完全にジャケ借りで置いていた本も…。その時の、わくわくする気持ちとか、本選びをもどかしく思った気持ちとか、そういうのが、今、このブログにつながっているのです…!

子どもたちと読書で繋がれること…今思えば、本当にありがたく、嬉しいことだった。

 

 

 

「ボタンちゃん」は、アンナちゃんのお気に入りのブラウスの、一番上にとまっているボタンの女の子。

ところが、ある日ボタンちゃんの糸が切れてしまい、仲良しのボタンホールちゃんと離ればなれになってしまう。コロコロ転がったボタンちゃんは、アンナちゃんのかつてのお気に入りのガラガラ、よだれかけ、ホッキョクグマのぬいぐるみに出会って…

 

トイ・ストーリーフリークとしては、ちょっとトイ・ストーリーシリーズをも思い出す内容なんだな!

誰にでもあるのに、いつか忘れてしまう、小さな頃の、大切な、大切な、思い出。

そして、記憶から消えてしまっても、そのどれもが、成長を支え、その人を作り上げているのだということ。

「ボタンちゃん」の救いの言葉たち。

 

小川洋子さんといえば、『博士の愛した数式』の作者。高校生の時に、この本の読書感想文を書いて、チョットいい賞をいただいた。指導してくれた先生の顔がフラッシュバックしました。お元気ですか、先生。

あと、『薬指の標本』も読んだな。

博士の愛した数式』は、記憶が80分しか持たない博士と、その家政婦の「私」、そしてその息子「ルート」の、もう、読んでいたらいろんな思いが溢れ出しちゃう、一筋縄ではいかないハートフルウォーミングストーリー。久しぶりに読みたい。

かと思えば、『薬指の標本』は、狂気漂う、怖くて、官能的な、美しい、お話。

 

小川洋子さんは、人間の情の深さ、あったかさを描くと同時に、かたい、つめたい、人間の残酷さや汚さ、それらの甘美さえも作品に落とし込んでいるように思う。

『ボタンちゃん』も、ただのかわいい癒しストーリーではなく、少し不思議な、大人っぽい雰囲気が漂っている気がするのだけれど、それは小川洋子節ゆえなのかも。

岡田千晶さんの絵がまた、その小川洋子節に寄り添って、優しさと、温かさと、ひんやりとした孤独を美しく表現している。

 

 

小川洋子さん好きにはぜひこの絵本を読んでみていただきたいし、子どもたちには、いつか大人になったとき、小川洋子さんの作品の魅力をビシビシと感じてほしい。 

 

…件の付箋にも、そんなことを、書いたような気がするな。

 

 

小さな付箋に書いたコメントたち。その一つ一つなんて、もう誰も覚えてはいないだろうけれど…あの愛おしい日々をいつか寂しく思う日が来たら、「ボタンちゃん」は、私にも、優しく語りかけてくれるのだろうか。

 

『ボタンちゃん』 2015年

発行所 株式会社PHP研究所

作 小川洋子 絵 岡田千晶