『くまさぶろう』 もりひさし/ユノセイイチ
おこりんぼママ☟
あの人が歌うのをきいたことがない☟
に続き、香さんに紹介していただいた本。ついに3冊目!
「せかいじゅうに ひとりきりいないくらいの、
すばらしい どろぼうのめいじんがいました。
それが、くまさぶろうです。」(本文より)
シャベル、コロッケ、傘、ミニカー…老若男女いろんな人からいろんなものを盗んでしまう“くまさぶろう”
あるときから、くまさぶろうは「ひとのこころ」をぬすみとることができるようになって…
とっても、胸に迫ってくる、良い絵本でした。
「くまさぶろう」という本の名前から、クマサブロウ!筋肉モリモリの熊が出て来る面白い話かな!とか勝手に思っていたんだけれど(どんなイメージだっ!)想像を裏切る、切なさ、温かさ。
本当に、たくさん、名作ってあるんだなぁ。嬉しい出会いでした。
「くまさぶろうは、いまごろ どこらへんを あるいているのでしょう。
もしかしたら、あなたのうちのすぐちかくまで きているかもしれませんね。」(本文より)
…最後の1ページで“くまさぶろう”をよりリアルに、身近に、感じる。そして、自分が置かれている泣きたくなるような状況も、いつか、きっと、もうすぐ、ふっと消え去ってくれるんじゃないか、という淡い希望が燃え上がって来る。
発行年は1978年。イマドキじゃない、描写、話し口。でも、その距離感こそが、子どもの悔しさとか、惨めさとか、いろんなザラザラした気持ちをちゃんと描いて、そして、救ってくれる。
子どもたちは、いつの時代だって、この複雑な味わいを、日々、噛み砕いて生きている。
…大人だって、そうだよね。
相手の心を盗むって、自分のものにするって、難しいなぁ。
わたしも“くまさぶろう”みたいな人になりたい…なれないけど…でも、やっぱり、そうあれたらいいな、って思う。
たとえほんの少しだって、君の嫌な気持ち、盗んで、元気に、してしまいたい。
『くまさぶろう』 1978年
発行所 こぐま社
著者 もりひさし/ユノセイイチ